内容説明
三島由紀夫『金閣寺』から村上春樹『ノルウェイの森』へ。この文字がなければ生まれてこなかった本がある。この文字でなければ、読まれなかった小説がある。特別なことばとあいまう唯一無二の書体。戦後文学の金字塔は精興社書体の声をもっていた。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
68
真・活字中毒とは、このことを指す。フォントの味わいは、一字だけを比較してもわからない。印刷された文章から見えない影のように漂う、言語にできない差異。それはまるで詩的美のようでもあり、姿のない絵画のようでもある。一印刷会社が生んだ明朝体フォントで読むことが、特別な体験になるという奇跡。1956年以来のさまざまな作品を紹介。さて読んだ後で、本棚から精興社印刷の本を探してみたところ、ありました! 梨木香歩『岸辺のヤービ』がまさにそれでした! あの本の何とも詩的な雰囲気は、本文の書体も一役買っていたのでした。 2020/02/27
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9
「精興社書体」をテーマにしたマニアックな本だけれども、なんの知識もなしに読める愉しいエッセイ。2017/12/30
たけはる
7
私が精興社書体にはじめて出会ったのは、堀江敏幸さんの『雪沼とその周辺』。あれ、なんだろうこの書体。いままで私が読んできた本とはぜんぜん違う。やわらかで端正で、それでいて硬質な知性をまとった――なんてうつくしくて、堀江さんの文章にふさわしいんだろう。そこからこの書体のことが気になって気になってネットで調べ、どうやらこれが「精興社書体」らしいとわかりました。いちどそう気づくと……おや、これまで私が読んできた本の中にもちらほら精興社書体がひそんでいる。→2018/07/19
いのふみ
3
やはり、この繊細で優美な書体によって日本文学がつくられてきた側面があることは否定できない。2021/04/13
タオルケット
2
フォントマニア向けに完全に振り切らずに、フォントを通して享受できる文学の素晴らしさみたいなのがとても丁寧に書かれていて、ステキな読書体験となった。 紹介されてた本ぜんぶ、読みたくなった、、2018/07/06