内容説明
日本の鉄道は、一八七二(明治五)年一〇月に開業した、新橋―横浜間にはじまる官設鉄道と五大私鉄によって、幹線鉄道網が一九〇七(明治四〇)年までにおおむね完成する。その前後から、小規模経営でのちのローカル線にあたる、局地鉄道が各地に誕生する。本書は局地鉄道に関する研究成果を通史的に総括し、日本鉄道史上に局地鉄道の位置づけをこころみ、局地鉄道研究の意義を提起する。
目次
序章 日本鉄道史と局地鉄道
1 馬力から蒸気機関へ
2 鉄道熱と法的規制
3 軽便鉄道の叢生
4 局地鉄道の諸相
5 地域統合と戦時体制
6 高度経済成長から国鉄解体へ
終章 二一世紀の局地鉄道
著者等紹介
三木理史[ミキマサフミ]
1965年9月、大阪府生まれ。1991年3月関西大学大学院文学研究科博士課程後期課程中退(歴史地理学専攻)。奈良大学文学部准教授。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アメヲトコ
6
沿線地域が狭く小規模な鉄道、すなわち局地鉄道について、馬車鉄道の時代から近年の観光化までを通史的に論じた一冊。地域社会との関わりが分析の軸で、とりわけ明治大正期の山師の跋扈と在地の人々との関係が興味深いところです。全体としてはいたって真面目な地域交通史研究の本なのですが、ところどころに隠しきれない著者の鉄道愛が表出しているのが趣深く、大学時代の撮影とおぼしき80年代の局地鉄道の写真は今となっては貴重な史料となっています。図版が非常に読み取りづらいのだけが非常に残念。2018/05/09
へくとぱすかる
2
ともすれば、全国の幹線鉄道にだけ焦点が当てられがちな鉄道史。地方のローカル鉄道から見れば、鉄道が投機の対象でもあったことがわかるし、またどうやって経営するかに腐心していたこともわかる。鉄道自身が、1世紀をかけた夢だったのかもしれない。ローカル線問題はなにも最近のことではないわけである。21世紀のローカル鉄道がどうやって機能を果たしていくかは、大いに興味がある。2013/12/04