シリーズ「教育改革」を超えて
「愛国心」の研究

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ A5判/ページ数 245p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784826503907
  • NDC分類 372.1
  • Cコード C1037

出版社内容情報

「新しい歴史教科書を作る会」が主唱する「愛国心」の内実は、小林よしのり氏の漫画に見られるように矛盾だらけの捻れた「反米・愛国ナショナリズム」に過ぎない。日本人が普通に持つ家族愛や郷土愛、地域愛といったものが、いつの間にか「国家」への「愛」に変質され、「忠誠」へとすり替えられる。このまやかしは今に始まったことではなく、戦前・戦中の学校教育の変質と同根であり、戦後民主教育もまたその捻れを突き破ることができなかった。国旗・国歌法の制定から『心のノート』へ、そして今、新自由主義の風潮が高まる中で特別支援教育の名の下に子どもたちの選別が始まろうとしている。現場教師による『愛国心』研究の緊急レポート。

●まえがき

□第1部 〈対談〉なぜ今、「愛国心」なのか
 斎藤貴男+永野恒雄+柿沼昌芳(司会)
若者とナショナリズム/イラク派兵の「大義」/新自由主義と国家主義はセットである/「国」を愛するとはどういうことか/ナショナリズムと排外主義/文化ナショナリズムと政治ナショナリズム/敗戦とネジレ/日本という国の悲しさ/東京都の教員管理/今、教師に何ができるか/高校紛争と校内暴力/教育に対するマッカーシズム/自衛隊・徴兵制・マスコミ

●序 章 イラク戦争と愛国心
自衛隊はアメリカの属兵か/湾岸戦争とイラク戦争/「愛国心」をめぐる今日的状況/「愛国心」をめぐるネジレ/自由主義史観の生い立ち/戦中の日本とフセイン政権/フセインをめぐる藤岡・板倉論争/踏絵を踏む教師、踏ませる教師


□第2部 学校の中の愛国心

● 第1章 最近の「日の丸・君が代」の状況~東京都の「新実施指針」をめぐる状況
一二月二三日の教育委員会の事/「日の丸・君が代」対策本部の設置と天皇制ファシズムの復権/一○月二三日に出された都教委の「新実施指針」の異常さ/戒厳令下の周年行事校/人権侵害の都教委指導―不起立・退場者など問題

● 第6章 エスニック・マイノリティの子どもたちとナショナリズム~多文化教育の可能性
エスニック・マイノリティの子どもたち/エスニック・マイノリティの子どもたちにとってのナショナリズム/多文化教育の可能性


□第3部 愛国心とは何か

● 第7章 若者のナショナル・アイデンティティと歴史認識
二つの疑問を軸に据えて/教育基本法の空洞化をめぐって/植民地支配民族の「名誉ある地位」/東北アジアの共存・共生のために

● 第8章 反米愛国と親米愛国
戦後、封印されていた〈反米愛国〉/湾岸戦争という経験/反米愛国か親米愛国か

● 第9章 愛国心とナルシシズム
私のナルシシズム/岡潔と三島由紀夫/愛国心と愛校心/万能感とナルシシズム/ナルシシズムを超えた愛国心

●第10章 敗北のなかの愛国心
愛国心について/愛国心とは何か/日本兵捕虜は何をしゃべったか/日本兵捕虜における敗北の構造/なぜ進んで情報を提供したのか/敗北の中の愛国心/おわりに―敗北空間としての戦後日本

●第11章 市民生活の中の愛国心
ああ、日の丸・君が代/「愛国」の来た道/一九三○年代の生活/「国ヲ

 国連の意向を無視してイラクへの侵攻を行なったアメリカ軍が、深刻な苦境に立たされている。そのアメリカ軍を支援するため、日本政府は、国内の世論を無視し、人命が失われる危険を冒して、「自衛隊」をイラクに派遣しようとしている。こうした政策に対し、自衛隊員の中からさえ、批判的な意見が現れているという。
 こうした動きと並行して、いま、教育基本法の「改正」、さらには日本国憲法の「改正」が進行している。世界最強国アメリカのイラク侵略を支持し、それに加担することで日本は、戦争を放棄した平和国家から、「戦争ができる国」、「海外派兵できる国」に転換しようとしている。
 北朝鮮との折衝にあたっている外交官を目標にした政治テロが起き、石原慎太郎・東京都知事がそれを「あたりまえだ」とする発言をおこなうという事件があった。その後も石原知事は、中国・韓国の人々の神経を逆なでする、誤謬に満ちた発言を繰り返している。しかし、こうした石原発言に対するマスコミや世論の反発は、なぜか今ひとつ徹底さを欠いている。
 日本に滞在している中国人の凶悪犯罪が大きく報じられる一方、中国では、日本人の軽率な行動に端を発した激しい反日デモが起きている。 おりしも学校教育の世界では、「国を愛する心」が強調され、「君が代」・「日の丸」を強要する動きが進行している。昨年(二○○三年)一○月二三日、東京都教育委員会は、都立学校の全校長を招集し、儀式的行事に際して、全教員の国旗敬礼、国歌斉唱を強制する内容の通達を手渡した。いずれこの動きは、全国に波及してゆく可能性がある。
 しかし、こうした中で、なぜか「教師」の姿が見えてこない。福岡市の「通知表」における「愛国心」評価問題が表面化したのは、教職員団体や教師の「内部告発」があったかを害するときは、常にその自由が保障されるというものではない。」(一九九四年一二月二二日)と判示している。都教委の「内心の自由」についての詭弁は、このような判例を援用しているのである。
 しかし宗教というものは、「内」(個人の内面)と「外」(布教活動)に分けられるものではない。国家は、宗教の「内」の部分だけは正当なものとして保障し、したがって内心の「可否」を問うことはできないが、「外形」は法律によって制限できるとしたのは、明治時代の政策であるという(阿満利麿『日本人はなぜ無宗教なのか』ちくま新書)。
 内心の自由は、それを表現することで成立するものである。今、教育の中で進行している事態は、子どもの「内心」に立ち入って、子どもが内心から「愛国心」を持つように迫るものと言える(本シリーズ『心のノート研究』参照)。
 そのような状況の中で強調される「愛国心」は、「君が代」・「日の丸」のように「身体」を通して強制するものであれ、『心のノート』のように、「こころ」を通してコントロールするものであれ、当然批判の対象としていかなくてはならない。ただ本書では、それらを単に批判するだけではなく、いま学校の中に踏み込もうとし

好評シリーズ、第2巻刊行。『機会不平等』『カルト資本主義』の斎藤貴男による「なぜ今、『愛国心』なのか」を収録!

内容説明

「愛国心」とは何か?なぜ今、「愛国心」なのか?現場教師による「愛国心」研究の緊急レポート。

目次

第1部 対談・なぜ今、「愛国心」なのか(イラク戦争と愛国心)
第2部 学校の中の愛国心(最近の「日の丸・君が代」の状況―東京都の「新実施指針」をめぐる状況;一教員の体験から―学校・教育行政・保護者住民と愛国心 ほか)
第3部 愛国心とは何か(若者のナショナル・アイデンティティと歴史認識;反米愛国と親米愛国 ほか)
第4部 「愛国心」の教育史(学徒勤労動員と愛国心教育―中学時代の体験から;沖縄の一女性の学校生活誌―戦時体制下の教育を中心に ほか)

著者等紹介

柿沼昌芳[カキヌママサヨシ]
1936年生まれ。元東京都立高校教諭。現在、全国教育法研究会会員、明治大学・中央大学などの非常勤講師

永野恒雄[ナガノツネオ]
1949年生まれ。都立大崎高校教諭。全国教育法研究会会長、日本教育法学会理事、歴史民俗学研究会会員
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。