愛の精神医学

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  • サイズ B6判/ページ数 241p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784826503785
  • NDC分類 493.7
  • Cコード C3047

出版社内容情報

エロスというトータルな領域の中で人間存在の根源を把握してみたいという思いから、その時代のエロスのうつろいを、サイコ・セックス・セラピーの臨床経験を踏まえて検証する。
クリニック・メンタルヘルスの治療関係のユニークな実践と、専門性に根ざした治療思想・治療論をとおして、新たな精神療法を探求した精神医学論集。

"はじめに

●第一部 精神医学論

『精神疾患』と規範
―――「ラベリング理論」をめぐる社会学的アプローチについて

サリヴァンのケースセミナー
―――『サリヴァンのケースセミナー』訳者あとがきより

ライヒ
―――Wilhelm Reich(1897~1957)

吉本隆明とフロイト
―――心的領域の意味
  
●第二部 治療論

インポテンスのセックスセラピー
―――Key words : psychosexual therapy, anxiety of performance, sensate focus technique, resistance, fear of success or intimacy
はじめに/セックスセラピーの立場/面接のはじまり/セックスセラピーについて/おわりに

青年は性を見失っているか
性の矛盾/性欲と対人的場/性をめぐる葛藤/終りに―「性的時代」のコメント

精神科薬物療法の意味とジレンマ
私の状態に対してこの薬は効くのか/どうしても薬を服まなければならないのか/いつまで薬は服み続けるのか(あるいは)具合がいいので、薬を中止してもいいのではないか/こんなに沢山の薬を服まなければならないのか/他者からの要請:何か薬を出してくれないか

治療的距離について愛の弁証法 R・D・レインの思想
―――自己愛から他者愛へ
「静かなる奇蹟」の時期/愛の名のもとの暴力/個人存在の破壊と瞞着/客体でない愛の対象
  
反精神医学から地域医療まで
―――篠木満氏との対談
開業までの経緯/開業してわかったこと/セックスセラピーについて

「楽にやりたい」――ごく私的な想い

ストレスとのおつき合い
悩みを言葉にすること
だれにもわかる心の病い
  
●第四部 断章

ソロ・モンクをききながら
埋められた状況の唄
台所のねずみ

解説 小嵐九八郎(作家・歌人)
初出一覧
"

 精神科医になってから三六年、町医者を生業にしてから、かれこれ二十数年。月並みだが、随分いろんなことがあったし、状況も随分と変わった。私自身は本質的にはあんまり変わっていない。特に自分で開業してからは、ひたすら患者さんの診察に明け暮れている。と言うと、格好いいが、ただ余裕がなかっただけかもしれない。しかし、開業当時、まだ患者さんの数も少なかった頃の診療は、今とは比べものにならないほど濃いものだった。とにかく、よく往診した。「待ちうける医療」「閉じこもる医療」に対してのアンチテーゼをスローガンに、要請があれば、早朝でも、深夜でも「出前診療」と称してよく出かけていった。
 現在では、クリニックのスペースは変わらないままスタッフも二〇名を超え、開業当時の一週間分の患者さんが一日でやってくることもある。そんなわけで、いつのまにか「閉じこもった」ままになってしまった。患者さんに目線をあわせて、できるだけ親切に対応することで、やぶ医者と見やぶられまいとするのに汲々としている。それにしても、つくづく開業という営為は大変な力技だと思う。経営のことも考えなくてはならないし、診療の質も維持しなくてはならないし、どっちに傾いてもがら、大げさに言うと、敵も味方もいっぱいの中で、紆余曲折の連続だった。実は本書の雑文の殆んどは、開業以前のもので、特に医局解体闘争、病院の改革闘争のさ中に書かれたものが多い。硬派から軟派まで、いろんな文のごった煮だが、それこそが私自身で、私自身のアイデンティティーなのだから仕方ない。
 開業以後の私しか知らないクリニックのスタッフや患者さんが読んだら、おそらく今の私から想像して、「盗作」と思うかもしれない。仮面を被っているつもりだったが、もう外せなくなってしまった。今や面白くも、おかしくもない人間になってしまったと嘆いても始まらないが、敵が少なくなっただけいいか。これからあと何年町医者をやっているかわからないが、自分自身の展望なんてものは、もはやあるはずもない。自分が現に関わっている人々に対しての責任だけはとることにして、うそでも、面白そうな顔をして生きていくことにしたい。
 あたり前のことだが、今迄実に多くの人に――先輩、同輩、後輩、患者さん等々――に支えられてきた。今後ものを書くことはないと思うので、ここで、遺書みたいで照れくさいのだが、特に影響を与えられた諸先輩に感謝の気持を記しておきたい。
 六が、その他今迄に関わった全ての人々に対して感謝の気持をあらわしたいと思います。
 最後に、本書の出版をお引きうけ下さった批評社のスタッフのみなさん、忙しい中、心よく「解説」を書いて下さった友人・作家で歌人の小嵐九八郎氏に感謝申し上げます。

野口昌也

「名医」野口昌也、初の単行本。『現代思想』『臨床精神医学』『精神医療』誌などの掲載論文を中心に構成した、充実の1冊です。

内容説明

エロスというトータルな領域の中で人間存在の根源を把握してみたいという思いから、その時代のエロスのうつろいを、サイコ・セックス・セラピーの臨床経験を踏まえて検証する。クリニック・メンタルヘルスの治療関係のユニークな実践と、専門性に根ざした治療思想・治療論をとおして、新たな精神療法を探求した精神医学論集。

目次

第1部 精神医学論(『精神疾患』と規範;サリヴァンのケースセミナー ほか)
第2部 治療論(インポテンスのセックスセラピー;青年は性を見失っているか ほか)
第3部 反精神医学論(反精神医学;「精神分裂病」 ほか)
第4部 断章(ソロ・モンクをききながら;埋められた状況の唄 ほか)

著者等紹介

野口昌也[ノグチマサヤ]
1940年千葉県に生れる。1966年慶応義塾大学医学部卒業。1987年「野口クリニック」開業(川崎市・鷺沼)。現在、同上院長及び「さぎぬま研究所」顧問
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