内容説明
生誕100年記念出版!初心者には最適な入門書として、またディープな水上文学ファンには最新の成果がつまった研究書として。未発表短編4篇収録!
目次
第1部 水上勉の再発見(作家紹介 一〇一年目の水上勉―生涯とその文学をたどる;新資料紹介1 『金閣炎上』原稿 ほか)
第2部 編集者・水上勉―雌伏のとき(インタビュー 焼け跡の時代の水上勉;ブックガイド 『フライパンの歌』『霧と影』 ほか)
第3部 作家・水上勉―飛躍のとき(座談 編集者による水上勉1―岩波剛さんを囲んで;ブックガイド 『雁の寺』『五番町夕霧楼』 ほか)
第4部 人間・水上勉―円熟のとき(座談 編集者による水上勉2;ブックガイド 『寺泊』『壺坂幻想』 ほか)
著者等紹介
大木志門[オオキシモン]
1974年生まれ。立教大学大学院文学研究科日本文学専攻博士後期課程満期退学。博士(文学)。現在、山梨大学大学院総合研究部教育学域准教授
掛野剛史[カケノタケシ]
1975年生まれ。東京都立大学大学院人文科学研究科国文学専攻博士後期課程満期退学。博士(文学)。現在、埼玉学園大学人間学部准教授
高橋孝次[タカハシコウジ]
1978年生まれ。千葉大学大学院社会文化科学研究科博士課程修了。博士(文学)。現在、帝京平成大学現代ライフ学部助教(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マカロニ マカロン
15
個人の感想です:B。『越前竹人形』読書会参考本として再読。今回特に印象に残ったのは、水上氏の長女蕗子さん(1946年生れ)のインタビュー「父・作家としての水上勉を語る」。蕗子さんの幼少のころに家に母とは別の女性が来ていてどんな思いがしたのかと聞かれると、「女中さんみたいに思っていた」と結構クールな父娘関係。水上さん自身は自らの作品で代表作として残るのは『飢餓海峡』と『ブンナよ、木からおりてこい』だと語っていたそうで、娘さんも同意している。私もこの両作品が水上作品の中では最も好きだ2023/12/28
マカロニ マカロン
12
個人の感想です:B。口絵に司修氏の描いた引き込まれるような水上勉曼荼羅が収められている。大木志門氏の作家紹介。多作家だった水上氏の全集未収録の短編4作。焼け跡から始まる戦後社会と水上文学の変遷がインタビューや論考で語られていく。『雁の寺』で直木賞を取り、社会派推理作家として円熟期を迎え『飢餓海峡』という傑作を書くが、師の宇野浩二氏からの「人間を書きなさい」というメモをもらい軌道修正を図る。直木賞選考員の後芥川賞選考員を務めたと言う経歴にもつながる。幅広いジャンルを書いた作家として今後も読み続けていきたい2022/07/18
パトラッシュ
3
社会派推理小説の雄として松本清張と並び称された水上勉だが、多くの評論や研究誌まである清張と比べ生誕100年の今に至るまで水上にはまともな伝記一冊もない。歴史や考古学にも手を出しながらミステリーという基本を外れなかった清張に対し、推理物から純文学に移行した水上は研究対象としにくかったのだろう。熱心な読者とはいえないが折に触れ水上作品に接してきた身には、ようやく作家の実像を知ることができた貴重な本だ。伝記的事実から作品の背景、他の作家との意外な関係や関係者の証言は面白かった。次はぜひ正統的な水上伝が望まれる。2019/07/20