内容説明
プロップ、トドロフ、バルト、ジュネットは、どのように物語を分析したのか?文学研究の世界に多大な影響を与えつづける「ナラトロジー(物語論)」について、古今東西の文学作品を例に、体系的かつ平易に詳述する実践的な入門書。
目次
第1章 「物語の構造」とは―プロップからバルトまで
第2章 ナラトロジー誕生までの理論的背景
第3章 「作者」と「語り手」について
第4章 物語の「時間」
第5章 視点(焦点化)と語る声
第6章 日本語における焦点化の仕方とオーバーラップ
著者等紹介
橋本陽介[ハシモトヨウスケ]
1982年、埼玉県に生まれる。慶應義塾大学大学院文学研究科中国文学専攻博士課程単位取得。博士(文学)。専攻、中国語を中心とした文体論、比較詩学。現在、慶應義塾大学非常勤講師(中国語)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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harass
67
ナラトロジーの解説入門書。小説の構造や語り口(話者、視点、時間など)を研究するナラトロジーは、文芸理論の一つで、この本は難解かと恐れていたが、例が豊富で読みやすい内容だった。日本の現代小説で視点や語り口の複雑な作品が目立つが、その意図のヒントになるだろう。個人的に、バルトの「作者の死」についてよく理解できた。西洋哲学の問題でもあったようだ。また著者独自の見解、各言語特有の問題(日本語と外国語の言語習慣による、翻訳のズレなど)に軽く触れている。これはおすすめの本。もっと手に入りやすくなることを期待する。2017/08/02
きいち
29
とてもわかりやすい。俊英だ…◇物語行為の日本と欧米言語の違いは目からウロコ。例えば朗読のときには、地の文が第三者の視点から書かれているのか、それとも登場人物の視点から語られているのかで読み方は変わる、それが日本語ローカルのものだなんて驚きだ。◇物語内容の時間と、物語言説の時間は異なる。自らが語り手となる時に人を楽しませることができるかどうかを左右するのは、それに意識的かどうかなのかも。◇ただ物語論を解説していくのではなく、縦横な作例用いてくれてるおかげで、そんなふうに物語を使うことを想起させながら読める。2017/07/15
かば
19
名著。物語とは何か、その構造についてわかりやすく解説。文学に携わるもの、または少しでも興味のあるものは必ず読むべきだろう。2019/01/13
歩月るな
13
『物語論 基礎と応用』よりこちらを先に。無意識の内に共通認識がにわか仕込みされてたんだなぁと言うか(本文中では暗黙の了解、と表現)解ってる人にしか通じないシステム?の話。解りやすい解説なのだけど、この理論はそれ自体正しいか如何かではなく、何か(読書なり人生なり)をちょっと面白くする技術(スパイス)なのだという事。理解せずとも知らずとも良いし、ふと何もかもつまらなく感じてしまう鬱ぎの虫を呼び起こす理論だと思う。深入りは諸刃の剣の様に感じる。批評に晒される前に一つ、むしろ創作者向けにおすすめの理論とも言える。2017/10/30
袖崎いたる
12
何がいいって例示だろうよ。高校生に教えていた経験が効いているのか、想定している読者が良い意味でチャラい。ゴリゴリのザ文学からのみでひしめく引用というのでもなく、原典だとイカツイ専門用語もさらりと解説してくれる。注意すべきなのはここで扱われるのは物語であって、小説ではないこと。小説は媒体としてその表現仕方と物語のおもしろさとの関係で扱われてはいるけど、広義の小説とは違う。この場合の広義ってのは筒井康隆さんあたりが考える、なんでもありな小説のこと。その点ではこの物語論で小説そのものを掬いきれるのかは覚束ない。2018/03/10