内容説明
放射能熱線を吐き、街を破壊するゴジラ、ビルを破壊し、悠然と飛翔するモスラ、音速を超えて飛ぶラドン。週末の映画館、私は怪獣たちに魅了されていた。昭和という時代、優れた大衆文化として特撮映画があった。特撮映画はいったい私たちに何を与えてくれたのだろうか。本書は原水爆イメージを手がかりとして特撮怪獣映画を読み解く社会学の「モノ」語りである。
目次
1 特撮怪獣映画の終焉に出会う―『ゴジラファイナルウォーズ』(二〇〇四年)
2 反原水爆という鮮明なメッセージ―『ゴジラ』(一九五四年)
3 リアルな恐怖としての原水爆イメージ―『美女と液体人間』(一九五八年)
4 ファンタジー化する原水爆イメージ―『モスラ』(一九六一年)
5 脱色されたリアルとしての原水爆イメージ―『フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン』(一九六五年)
6 お茶の間に定着する軽妙な原水爆イメージ―『ウルトラQ』(一九六六年)
7 特撮怪獣映画を読み解く意味とは?―『昭和歌謡大全集』(二〇〇四年)
著者等紹介
好井裕明[ヨシイヒロアキ]
1956年生。筑波大学大学院人文社会科学研究科教授。専門は、差別の社会学、社会問題のエスノメソドロジー、映画の社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちぇけら
17
「あのゴジラが、最後の一匹だとは、思えない。もし水爆実験が続けて行われるとしたら、あのゴジラの同類が、また世界のどこかに現れてくるかもしれない」という山根の語りは、中学生の時に見た記憶が残っている。それほどゴジラによって訴えてくる、反戦、反原爆のメッセージが強かったのだと思う。そう、ゴジラは反原爆の物語なのだ。ナウシカなど、原爆や水爆のモチーフは随所に見受けられる。しかしそれを意識しないほど、原爆に対する恐れが、日常に溶け込んでしまっているのかもしれない。今一度、唯一の被爆国として、原爆について考えたい。2017/06/04
神太郎
8
特撮怪獣ものと原水爆の関連性について書かれたもの。ゴジラ誕生の背景にあった原爆への怒りが段々と希薄化していき、乖離していく様を著者が熱く語る。やや深読みしすぎでは?と普通に怪獣映画が好きな自分からすれば思ってしまうが、確かに「原水爆」というものの扱いは年代ごとに変化しているとは思う。007でもシャワーで簡単に被爆量下げるシーンとかを見たが「そりゃないよ!」と突っ込んだなぁ。 3.11を経て再び被爆だとか放射線量というものが「リアル」なものとして扱われている。読むタイミングとしては丁度良かったのかも?2014/07/24
みずし(交換読書会@東京)
1
大学教授によって書かれた本だが少年時代は怪獣に熱狂していたらしくその愛が伝わる内容。怪獣映画で重要な要素のひとつである(だった)原爆がどのように扱われてきたかその変遷を知れる。2016/08/10