内容説明
私たちは「死刑」について、どれほどのことを知っているだろう。凶悪犯罪が多発する現状にあって、「人を殺した悪人が下される刑罰」といった大雑把な認識でしかないのではないか?ましてや、その対象者たる「死刑囚」たちの死にいたる個々の軌跡のいくばくかを知るものは少ないはず。死刑制度のさまざまな作用を浮かび上がらせる25人を中心に107人の死刑囚をトレースした傑作ドキュメント。
目次
戦争―兵役で知った性への異常心理(小平義雄)
恩赦―戦争の混乱で消えた公判記録(佐々木喬司)
少年―「死」を恐れないたった十数年の人生(伊藤幸治)
逆転死刑―“愛人”に裏切られた宿怨殺人の顛末(古屋栄雄)
弁護放棄―被告に“死刑判決”を下した弁護人(三枝賢・大西克己)
一票の差―生死をわけた最高裁長官の“死刑支持”(竹内景助)
境界線―類似犯罪の判決は片や死刑、片や無期(津田暎)
自白―最高検察庁を動揺させた“秘密通信”(羽賀竹男)
誤殺―兄の身がわりに処刑台に立った弟(古川高志)
差別―ハンセン病患者への偏見が事件の出発点(藤本松夫)〔ほか〕
著者等紹介
村野薫[ムラノカオル]
出版社勤務を経て、現在フリーランス
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感想・レビュー
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nobody
16
戦旗・共産同の荒岱介も死刑囚の命も権力に弄ばれる。猫は小動物をいたぶり興が尽きたら殺す。我々はそのように弄ぶ権力という存在を認めている。最大多数の最大幸福のためには弱者の犠牲は必須なのだと。そして死刑は残虐な刑かという論議の成立を認めねばならぬ。天皇と死刑には触れてはならぬ。何でも反対する某党の存在がありそれが騒がない権力の行いは問題なしと思わすのが同党の役目である。常識はオブラートに包まねば過激派となりおくびにも出してはならぬが「(支援・再審)運動の広がりを思えば殺る時は今しかない」迸る筆は抑えきれず。2018/06/24
Gen Kato
1
再読。死刑制度が制度として「なぜ?」と首を傾げるしかないゆらぎや矛盾、そしてあってはならない「誤認」に基づいて執行されているという重い現実…2014/04/08