出版社内容情報
41年間にわたる外交官生活の締めくくりとして、私は2013?15年にかけてスウェーデンに日本国大使として駐在した。本書ではその経験をもとに、タイトル通りスウェーデンという国の特徴を紹介する。金髪碧眼のスウェーデン人が、和の心や中庸の精神、シンプルさを愛でる審美眼など、我々日本人と共通の資質を備えていると言うと意外に思われるかもしれない。と同時に、スウェーデンが極めて規範意識の高い国であって腐敗が少ない事実、またその意識に裏打ちされた目を見張るような国内・外交政策や、「小さな国」の国民が「大きな政府」に信頼を寄せている高福祉国家の実態にも着目する。
ただ、既刊の類書と違って、本書はスウェーデン礼賛に留まってはいない。同国が誇りとする、社民党政権が長年にわたって築き上げてきた福祉や教育の現場で歪みが生じており、国民の不満が昂じて極右政党が国会における第三勢力にまで伸長している現状にも焦点を当てている。現在主に難民問題で生起しているヨーロッパ政治混迷の底流は、すでにスウェーデンで看取されていたのである。
本書の構成にあたっては、スウェーデンという国の全体像を知ってもらうことにも心を砕いた。200年に及ぶ平和を享受する背景に「中立政策」や優れた武器輸出国としての側面があること、イノベーションを重視する国民性、原子力エネルギーに四割を依存する原発大国としての政策、クリミア・ウクライナ情勢以降緊張を高める対露関係を背景に兵役義務を再導入しようとする動きや、NATO加盟を容認する国民の声の高まり、さらには地方の魅力や文化散策など、多面的な話題を盛り込んだ。
様々な側面を踏まえることで、この興味深い国をより深く知ってもらえたらと思う。本書はスウェーデンの今を生き抜く人々を描くコンテンポラリー・ドキュメントとしても面白く、王族や政財界人などをはじめとして、外交官ならではの観察眼に注目して欲しい。あなたが訪れる際の一助になるかもしれない。(もりもと・せいじ)
森元誠二[モリモトセイジ]
1951年愛知県生まれ。75年東京大学法学部卒。2008年?在オマーン日本国特命全権大使、13?15年在スウェーデン日本国特命全権大使。現在東京大学大学院総合文化研究科客員教授、富士通株式会社顧問。著書に『知られざる国オマーン』。
内容説明
病院で、首相が順番待ちをする国の姿。ともに悩み、ともに考える良きパートナー。外交の現場で著者自ら撮影したカラー写真が示す、スウェーデンの彩り。
目次
第1章 スウェーデン社会を特徴づけるもの
第2章 高度の福祉国家
第3章 二〇一四年の政権交代の背景
第4章 家族をめぐるユニークな環境
第5章 徹底した平等主義
第6章 スウェーデンの外交・国防政策
第7章 進んだスウェーデンの原子力エネルギー政策とイノベーション―経済的合理性
第8章 ノーベル賞と「ノーベル・プライズ・ダイアログ」
第9章 地方の魅力
第10章 スウェーデンの文化散策
第11章 思い出深い人々
著者等紹介
森元誠二[モリモトセイジ]
1951年4月、愛知県岡崎市生まれ。1975年3月東京大学法学部卒、同年4月外務省入省。国際報道課長、西欧第一課長、国際社会協力部審議官、在ウィーン国際機関日本政府代表部次席大使、駐独次席公使などを経て2008年から2011年まで在オマーン日本国特命全権大使。2011年から2013年まで農畜産業振興機構理事。同年10月から2015年11月まで在スウェーデン日本国特命全権大使。現在、東京大学大学院総合文化研究科客員教授、富士通株式会社顧問(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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