出版社内容情報
『フラナリー・オコナーとの和やかな日々』に続いて、オコナー関連の翻訳をお届けする。原著の裏表紙に書かれたキャッチフレーズの通り、「深い霊性と激しい想像力をもつ作家を取り巻く物質界」=アメリカ合衆国ジョージア州への文学的ガイドブックである。
ジョージアはオコナーの故郷であり、発病後の「幽閉の地」でもあった。オコナーはニューヨークで作家として活躍し始めたばかりの二五歳で、父の命を奪ったのと同じ全身性エリテマトーデスという難病にかかった。そしてその後の人生を故郷ジョージアで過ごすことを余儀なくされたのである。
都会での活躍の機会を失い、肉体的・地理的・社会的制約を受けながら田舎に引きこもることになり、作家としての夢は一度は断たれたかに見えた。しかし、オコナーは自らに課せられた幾多の制約を厭うことなく、むしろ神から与えられた「最高の恵み」と考え、その後の創作の原点・機動力としていった。
またオコナーは、かつて奴隷制度を有し、南北戦争に負けたアメリカ南部が、「堕ちるという経験に加えて、それを解釈する手段も持っていたから、二重に恵まれたというべきである」(上杉明訳『秘義と習俗』春秋社、五八頁)ことに気付く。
幼少期のオコナーを温かく育んだ故郷ジョージア、都会から帰還し死に至るまでの彼女が作家として過ごしたジョージア、歴史に深い傷跡をもち、彼女にたくさんのイマジネーションを与えたジョージアを、作品鑑賞を絡めながら紹介するものである。
本書によって、フラナリー・オコナーという一人の女性作家がジョージアのどのような歴史と環境のなかに生まれ育ち、「二〇世紀最大の短編小説家の一人」と呼ばれるまでに成長したのかを知り、作家が大切にしていた「場所の感覚」を感じ取るための一助となることを願う。懇切な注を付すことで、「オコナーの故郷ジョージア」を旅する際のガイドブックとしての用途にも配慮した。(たなか・こうじ)
【著者紹介】
Sarah GORDON フラナリー・オコナー・アンダルシア財団理事、ジョージア・カレッジ州立大学名誉教授(英語英文学)。長年にわたり、世界的に名高い「フラナリー・オコナー・シンポジウム」の座長を務め、研究紀要『フラナリー・オコナー・ブレティン』などの編集に携わる。オコナー研究の第一人者の一人。
内容説明
故郷ジョージアへの旅を通して、創作の原点に迫る。本文に関連した作品鑑賞(コラム)を掲載!『フラナリー・オコナーとの和やかな日々―オーラル・ヒストリー』の続刊。
目次
第1章 サヴァンナ(フラナリー家とオコナー家;フラナリー・オコナーの子ども時代の家;オコナーの共同体 ほか)
第2章 ミレッジヴィル(知事旧公邸;クライン邸;ジョージア・カレッジ&州立大学とピーボディー高校 ほか)
第3章 アンダルシア(農場の歴史小話;母屋;オコナーと土地)
第4章 聖霊修道院
第5章 ジョージア州のカトリック
第6章 オコナー作品におけるカトリック信仰
著者等紹介
田中浩司[タナカコウジ]
1960年生まれ。神奈川県横須賀市出身。防衛大学校教授・明治学院大学非常勤講師・明治学院大学キリスト教研究所協力研究員。日本フラナリー・オコナー協会副会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ