出版社内容情報
日本企業のアジアへの進出先は、かつては中国に集中していたが、近年ではインドネシア、ベトナム、カンボジア、ミャンマーへと広域化し、日本企業は難しい「選択」を求められるようになってきた。つまり、アジアの多様な国・地域の立地環境上の魅力とリスクを把握しながら、どこの国・地域にどのような事業をどのように展開するのかという立地戦略のストーリーを構想することが重要となってきたわけである。この成功ストーリーの構築に際しては、以下に挙げる三つのポイントを考えることが不可欠となる。
第一は、「市場開拓の場所としてのアジア」である。日本企業立地先としてのアジア地域は、その経済成長に伴って、コスト削減の場所というよりも市場開拓の場所になってきている。アジア地域は賃金上昇のリスクがあり、このリスク軽減のためにも現地の市場開拓が重要と言える。
第二は、「アジアにおけるバリューチェーンの現地化」である。進出先では、バリューチェーンの視点から現地化をどのように達成させるべきかを検討することが重要となる。本書では、企業内および企業間におけるバリュー(価値)を生み出す「事業活動のつながり」をバリューチェーンと定義しており、原材料の調達や製品の出荷といったサプライチェーン(供給網)を中心にとらえつつも、物流面以外の様々な取引関係も考慮に入れている。
第三は、「現地化する日本企業のDNA」である。現地での取引が中心になり、現地人材が事業活動を担うようになっても、日系現地法人は日本企業としてのアイデンティティを持続するべきであろう。そのためには、現地化する日本企業のDNAとは何かを考えることが重要となる。
本書では、以上の三つのポイントを踏まえながら、日本企業立地先としてのアジアの魅力とリスクの観点から、日本企業のアジア進出戦略のあり方を探っている。(すずき・ようたろう)
【著者紹介】
1960年生まれ。大阪市立大学商学部教授。アジア太平洋研究所・主席研究員。九州大学大学院修了、博士(経済学)。産業立地論。著書『多国籍企業の立地と世界経済』『産業立地のグローバル化』など多数。
内容説明
成長を続けるアジア市場の進出戦略を探る。日本企業の立地先としての「魅力」と「リスク」はどこにあるのか。
目次
第1章 日本企業のアジア市場志向立地とバリューチェーン構築―その実態と理論的理解
第2章 日本の繊維・アパレル企業のアジアでの立地展開とバリューチェーンの形成
第3章 電機産業のアジア立地とバリューチェーンのダイナミズム
第4章 中国の自動車産業クラスターにおける日系企業のバリューチェーン
第5章 日本企業のアジア大都市への立地展開とサービス化―集積から生まれるもう一つの「現地市場」
第6章 外食チェーンのアジア立地展開とバリューチェーン
第7章 日系銀行業の中国立地展開とバリューチェーン
著者等紹介
鈴木洋太郎[スズキヨウタロウ]
1960年生まれ。大阪市立大学大学院経営学研究科・商学部教授。一般財団法人アジア太平洋研究所(APIR)主席研究員。九州大学大学院経済学研究科経済工学専攻修了、博士(経済学)。専門分野は、産業立地論(国際産業立地研究)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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