出版社内容情報
アメリカを中心に展開されてきた戦争正当化のイデオロギーと政治・経済システムの欺瞞を徹底的に暴き、対抗の道筋を提示
本書はチュニジアに始まる今日の中東の民主化のうねりとその後の深刻な状況の以前に書かれたものだが、現代世界が抱える矛盾の本質に迫る点で、まさに今読まれるに価する。 旧ユーゴスラビア、コンゴ、イラク、アフガニスタンと、最近の戦争には、つねに立派な正当化の理由づけがなされてきた。人権の擁護、人道的干渉権、テロリズムとの戦い…。著者はさまざまなテクストを引用しながら、戦争正当化イデオロギーの欺瞞性を徹底して暴く。もちろん、著者の最大の攻撃目標は現代の世界秩序の支配者、アメリカ合州国である。アメリカは今、南北格差の根底にある植民地支配の歴史の継承者として君臨する。アメリカはこれまでラテン・アメリカで何をやってきたか、本書ではその犯罪行為の数々が容赦なく明るみに出され、現代世界の政治的・経済的システムがいかに欺瞞に満ちているかが浮き彫りにされる。世界はこのままでいいのか。著者は「怒り」の感情が、この本を書いた動機としてあると言う。どこに希望を見出せるか。彼はまず過去20年の世界の歴史的展開の簡潔で正確な見取り図を描くことを考えた。現在のメディアで支配的なものの見方、そのイデオロギー的偏りを排して客観的に作られたこの図には強い説得力がある。アメリカ中心の干渉活動の欺瞞に対抗して著者が依って立つのは、国家主権の尊重と国際法の厳守である。これが万能でないことは明らかだが、原則にまず立ち返るところにしか希望の灯は見えないと著者は考える。ブリクモンのあずかり知らぬところだが、本書を読むと、アメリカの占領国として再出発し、“日米同盟”の名の下で今もひたすら従うことしか知らない日本の姿も、改めて考えざるをえなくなる。(訳者 菊地 昌実)
内容説明
人権擁護、人道的干渉権、保護する責任、そしてテロとの戦い、予防戦争…戦争正当化イデオロギーは誰によってどのように生産されてきたか。これを乗り越える道筋はあるか。現代国際政治・経済システムの欺瞞の根源を捉え、「もう一つの世界」を共に作り出していくための怒りと希望の書。
目次
1 本書のテーマと目的
2 権力とイデオロギー
3 第三世界と西欧
4 人権を擁護する者への質問
5 反戦の弱い論拠と強い論拠
6 幻想と欺瞞
7 罪の意識という武器
8 展望、危険、そして希望
Textes
著者等紹介
ブリクモン,ジャン[ブリクモン,ジャン][Bricmont,Jean]
1952年生まれ。ベルギーの理論物理学者、科学哲学者、ルーヴァン大学教授。科学哲学における相対主義を批判し、有名となる。一方、ノーム・チョムスキーらと協力して、アメリカの帝国主義を告発する発言を続け、またラッセル法廷(ベトナル戦犯国際法廷)でも積極的な協力活動を行っている
菊地昌実[キクチマサミ]
1938年生まれ。東京大学大学院(比較文学・比較文化)修士課程修了。北海道大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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