出版社内容情報
◎根本的な問題を措いた場当たり的支援では、地球規模の課題は解決できない。国際協力をめぐる本質的議論を促す提言書。
貧困、災害、紛争、環境破壊などグローバル・イシューに対して解決の目処が立たない中、それら問題の渦中にいる人たちへの国際支援活動にはますますの期待がかかっている。しかし、実際の現場活動は思うように進まないことも多く、支援従事者(=国際協力団体の職員やコンサルタント、あるいはボランティアとして活動に直に携わる人たち)の悩みは尽きない。現場活動だけでは太刀打ちできない大きな課題の存在(たとえば、テロや紛争の激化や市場中心主義の広まり)、支援従事者にその矛盾に向き合う猶予を与えない成果主義の跋扈、そしてその結果生じる支援をめぐる理念と現実の乖離など、国際協力団体はさまざまな葛藤に直面している。従来の関連書物ではこうした難題が正面切って扱われることは少なかったが、本書ではあえてその「根本的な問題」に光を当て、都合の良くない「裏舞台」から背を向けるという慣例を脱却した、国際協力のあり方をめぐるより本質的な議論を目指している。そこで国際協力活動の実例を挙げながら、支援プロセスの諸局面でどのような「根本的な問題」が二の次にされているのかを分析し、今後そうした事態を乗り越えるにはどうすれば良いのかを検討していく。武力行使によるテロ対策や市場開放による経済活性化など、今日の地球社会は「根本的な問題」を脇に追いやった小手先の対応が優先されがちな時代にある。「当面のニーズに応える」だけのこうした風潮は、国際協力の対象となる国や地域の人たちの暮らしを圧迫しており、もし国際協力までもが同じ潮流に乗った活動に終始するなら、せっかくの支援活動も場当たり的なものに終わってしまうだろう。グローバル・イシューの抜本的な解決に向けて、支援従事者は国際協力を取り巻く社会矛盾についても深く考え、行動していく(=「根本的な問題に向き合う」)ことが求められている。 (著者 真崎克彦)
内容説明
目的論・機械論的な発想で安易に支援が進められた場合、どのような局面で「根本的な問題」に向き合えなくなってしまうのか、そして「当面のニーズ」への対処に朝われがちとなるそうした事態を乗り越えるにはどのような「発想転換」が必要なのか、それらを具体的な「地域社会開発支援」の事例を挙げながら読者とともに考えていく。一般に、「地域社会開発支援」のプロセスには既ね四つの局面がある。「支援対象地域への接近」→「支援対象者の絞り込み」→「住民参加の促進」→「支援成果の把握」である。本書ではこれら四つの局面を各章ごとに順次取り上げ、それぞれの「裏舞台」から見えてくる課題や展望を明らかにする。
目次
序章 「裏舞台」からの発想転換
第1章 支援対象地域への接近―地元の「歓待」の表と裏
第2章 支援対象者の絞り込み―「言語の自由」から生じる曖昧さ
第3章 住民参加の推進―主体性を制限する「例外状況」
第4章 支援成果の把握―「持続」する活動の成り行き
終章 「根本的な問題に向き合う」支援の実現
著者等紹介
真崎克彦[マサキカツヒコ]
清泉女子大学地球市民学科准教授(国際協力論)。8年間の国際協力の実務を経て2003年にサセックス大学で博士号(開発研究)を取得。現在も国際機関・政府組織・民間団体のアドバイザーとして支援現場に関わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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