出版社内容情報
企業のグローバリゼーションが進む中、中国が「巨大市場」として脚光を浴び始めてから、どれだけの歳月が流れたであろうか。「巨大市場」には、外資や中国資本による生産活動の急展開(工場の大量出現)がもたらした「資源・材料・部品市場」と、一三億人が形成した「消費市場」との二つがある。前者については、よく知られるように、すでに多くの企業が相当の利益を享受してきた。
ところが、後者の「消費市場」に目を向けると、事情が一変する。意外なことに、いまだに利益を得られていない企業が珍しくないのだ。確かに、中国人の平均的な所得からすれば、とてつもなく高価な耐久消費財が売れているし、食堂での食事の三~五倍もするコーヒーを売る「スターバックス」が賑わったりもしている。しかし、それらは全体から見ると例外的であり、日本を含めた外資の消費財メーカーや流通業(グローバル企業)の多くが苦境に陥っている。つまり、「消費市場」としての中国市場は、一般に想像されているほど「巨大」でもなければ「容易く」もないことが明らかになりつつあるのである。
実は、このような現象は台湾市場や韓国市場でも起きている。一体、東アジア市場で何が起きているのであろうか。企業は何を読み違えているのであろうか。
本書は、中・韓・台の三つの消費市場をとりあげて、それぞれの消費市場が有する固有のダイナミズム(市場の論理)に迫ったものである。各市場が有する固有のダイナミズムを「ローカルな市場のコンテキスト」と呼び、東アジアに流れるコンテキストの解明と、その解読のキーを提示している。
本書により、これまで気づかなかった東アジアの新しい姿が見えてくると共に、グローバリゼーションの真の意味、真の姿も理解できるであろう。本書は前著[東南アジア編]の続編である。アジア市場やグローバリゼーションへの一層の理解のためにも併せて読んでいただきたい。(かわばた・もとお)
内容説明
「反日」「親日」「巨大」市場の謎に迫る。中国・台湾・韓国の消費市場のダイナミズムを現場の視点で解読し、グローバル化の真実を解明する。
目次
第1章 越境するドラマと受容の脈絡
第2章 いま、東アジアで何が起きているのか
第3章 東アジアの「反日」と市場の脈絡
第4章 韓国の流通市場
第5章 台湾の「親日」と市場の脈絡
第6章 台湾の消費市場
第7章 「巨大消費市場」への幻想と市場の脈絡
第8章 中国の流通市場(北京、上海、大連)
第9章 中国の流通市場の脈絡(香港、広東)
第10章 東アジア市場の脈絡を探る
著者等紹介
川端基夫[カワバタモトオ]
1956年、滋賀県生まれ。大阪市立大学大学院修了。経済学博士。龍谷大学経営学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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