出版社内容情報
西迫 大祐[ニシサコ ダイスケ]
著・文・その他
内容説明
大都市の出現とともに患染症への不安が生まれた。ペストやコレラの大流行をきっかけに、都市の健康をまもる公衆衛生「法」が生まれた。それはまた、確率・統計の手法などを介した統治へのまなざしの誕生でもあった。18世紀から19世紀のパリを中心に、病と法と都市の密接な関係を鮮やかに解明した、気鋭の力作。
目次
ミアズマと感染―感染症と予防の近代前史
第1部 十八世紀における感染症と法(マルセイユのペスト―ヨーロッパ最後のペスト流行とポリス;悪臭と密集―十八世紀における都市と感染について;腐敗と衛生―ルソーとカバニス;生命の確率―予防接種の問題について)
第2部 十九世紀における感染症と法(感染症の衛生的統治―一八三二年のコレラ;手本の感染―公衆衛生と精神感染;一八四九年のコレラと法;人口と連帯―一九〇二年の公衆衛生法)
著者等紹介
西迫大祐[ニシサコダイスケ]
1980年、東京生まれ。明治大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(法学)。現在、明治大学法学部助教。専門は法哲学、法社会学、フランス現代思想(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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翔亀
36
2018年刊行。18世紀から19世紀のパリを中心にした感染症の歴史。博士論文を基にした労作だ。コロナが無かったら注目されることもなかっただろう地味な論文だが、パリの感染症の実態と、隔離やロックダウンといった公衆衛生という権力行政がどのような考えでどのような議論を経て法として確立されたかを詳細緻密に跡付けた本書は、今だからこそ読む価値があると思う。これは感染症の社会史であるとともに、感染症に関する思想史であり、感染症対策の都市政治史である(書名から連想される法哲学ではなく歴史書と考えてよい)。あの世界の↓2020/09/23
やなぎ
1
感染症と人。 「歴史は繰り返す」という言葉を使うことが躊躇われるほど、もっと鮮明で、切実なものをこの本は伝える。 何かが始まっていくときの、それが始まりだとも気付かない感じ、掴めなさを描ききっている。 COVID-19が拡大し始めた頃、それがこれ程の危機であると分かっていた人はどれほどいただろうか? 歴史を学ぶことで、まだ始まりかけたばかりの危機を捉え、対処することができる(かもしれない)。そう改めて気づかされた一冊。 一点不満なのは題名。もっと堅くない方が良い2021/05/16
inu
0
「感染症」を人々がどのように捉え、そして統治がどのように変化していったか。恐ろしいものが外からくる世界から、内から生じる世界へ。生活環境(都市)の衛生から人間の衛生へ。人間の外面の衛生から内面の精神衛生へ。統治としての衛生が大きくなっていく過程。議論の下敷きにはフーコーがいる。 やはりコロナ禍を念頭に読んでしまうが、予防接種や私権制限を巡るいざこざなど人間はいつの時代も変わらんなとちょっと面白い。2022/12/11