出版社内容情報
◆高い質を確保するため、どう研究を管理するか
昨今、研究の資金獲得やポストの確保のために、研究業績の評価が重要となっています。そのための評価基準が求められますが、質的研究は、従来の科学的研究で主流を占める量的研究とは全く異なるため、量的研究の考え方を適用することができません。質的研究の特質を活かし、質を確保するためには、何に留意し、いかに研究を管理すればよいのか。そしてその研究をどのように評価すればよいのか。本書はそれらの問題と解決について丁寧に解説します。どのような質的研究にせよ、参照すべき枠組みを提供する。質的研究者待望の一冊です。
質的研究の「質」管理 目次
編者から(ウヴェ・フリック)
「SAGE質的研究キット」の紹介
質的研究とは何か
質的研究をどのように行うか
「SAGE質的研究キット」が扱う範囲
本書について(ウヴェ・フリック)
1章 研究の質にどう取り組むか
なぜ質的研究の質が問題となるのか
内的必要と外的挑戦
質の問題を問う4つのレベル
問題─質的研究の質を評価する方法
質的研究の倫理と質
本書の構成
2章 基準・規準・チェックリスト・ガイドライン
はじめに
質的研究とは何であり、何を指しているのか?
標準化されていない研究の「標準」
質的研究の問いに答える伝統的な規準か、あるいは新しい規準か?
伝統的な規準の再定式化
新しい、方法に適した規準
ガイドライン、チェックリスト、規準のカテゴリー
規準を定式化する第三の選択肢としての方略
3章 多様性を管理する方略
はじめに
理論的サンプリング
分析的帰納法
メンバーや聴衆の合意
結 論
4章 トライアンギュレーションの概念
質的研究の歴史におけるトライアンギュレーション
何がトライアンギュレーションで何がそうでないのか?
多元的トライアンギュレーション
議論の流れ
洗練された厳密性としてのトライアンギュレーション
─デンジンの批判への応答
視点の体系的トライアンギュレーション
統合的トライアンギュレーション
問題の構築、知識の生産、結果の保証の間の
トライアンギュレーション
5章 質的研究における方法論的トライアンギュレーション
方法内トライアンギュレーション
─エピソードインタビューのケース
方法内トライアンギュレーションを用いた例
異なる質的研究方法のトライアンギュレーション
方法間トライアンギュレーションの例
質の促進の文脈での、質的研究における
トライアンギュレーション法
6章 エスノグラフィーにおけるトライアンギュレーション
参与観察からエスノグラフィーへ
エスノグラフィーにおける暗黙的トライアンギュレーション
─ハイブリッドな方法論
エスノグラフィーにおける明示的トライアンギュレーション
─トライアンギュレーションの指針
エスノグラフィーにおけるトライアンギュレーションの一例
質的研究の質を管理する文脈での、
エスノグラフィーにおけるトライアンギュレーション
7章 質的研究と量的研究のトライアンギュレーション
質的研究と量的研究を結びつけることの意義
質的デザインと量的デザイン
質的方法と量的方法を結びつける
質的データと量的データを結びつける
質的結果と量的結果を結びつける
量的研究における質の評価の文脈での、質的研究と量的研究の
トライアンギュレーション
質的研究と量的研究のトライアンギュレーションの例
質的研究の質を管理する文脈における、質的研究と量的研究の
トライアンギュレーション
8章 質を管理するためにトライアンギュレーションをどう使うか
─実践的問題
アクセスの特別な問題
デザインとサンプリング
データの収集と解釈
質的研究と量的研究を結びつけるレベル
トライアンギュレーションを使う研究におけるコンピュータ
トライアンギュレーションを用いた研究のプレゼンテーション
研究プロセスにおけるトライアンギュレーションの位置
トライアンギュレーションを用いた研究への質的基準
結 論
9章 質、創造性、倫理─異なる問いの立て方
介入としての研究
倫理的健全性の前提としての研究の適切性
倫理的適切性の前提としての研究の質
質的研究における倫理的原則
質的研究の倫理的ジレンマ
質と妥当性の議論における倫理的次元
10章 質的研究の質を管理する─プロセスと透明性への注目
方法とデザインの適用
質的研究の品質管理
意思決定過程の結果としての質的研究の質
透明性、文書化、執筆
訳者あとがき
用語解説
文 献
人名索引
事項索引
装幀=新曜社デザイン室
ウヴェ・フリック[ウヴェ フリック]
上淵 寿[ウエブチ ヒサシ]
内容説明
質的研究の質をいかに評価するか。高い質を確保するために、どう研究を管理するか。質的研究には、量的研究とは異なる評価基準が求められる。質的研究の特質である多様性を管理し、研究を拡張する方法としてのトライアンギュレーションを中心に、質的研究の質を管理するにあたっての問題とその解決について丁寧に解説。どのような質的研究にせよ参照すべき、枠組みを提供。
目次
1章 研究の質にどう取り組むか
2章 基準・規準・チェックリスト・ガイドライン
3章 多様性を管理する方略
4章 トライアンギュレーションの概念
5章 質的研究における方法論的トライアンギュレーション
6章 エスノグラフィーにおけるトライアンギュレーション
7章 質的研究と量的研究のトライアンギュレーション
8章 質を管理するためにトライアンギュレーションをどう使うか―実践的問題
9章 質、創造性、倫理―異なる問いの立て方
10章 質的研究の質を管理する―プロセスと透明性への注目
著者等紹介
フリック,ウヴェ[フリック,ウヴェ] [Flick,Uwe]
1956年生まれ。ベルリン自由大学で心理学・社会学を専攻し、1988年PhD.応用科学教授としてドイツ、オーストリア、カナダで質的研究について教鞭を執り、現在ベルリン自由大学教授。またイギリス、フランス、ポルトガル、ニユージーランドなどの大学でも客員教授に招かれている。主要な研究領域は質的研究、健康と公衆衛生における社会的表象、不定住の若者や移民、テクノロジの変化と日常など
上淵寿[ウエブチヒサシ]
東京学芸大学教育学部教授。博士(教育学)。東京大学大学院博士後期課程教育学研究科単位取得退学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。