出版社内容情報
◆「知らないうちに道路ができちゃった」と後悔しないために
現代の都市は、様々な人々が共に生きる=「共生」の側面が強くなっています。にもかかわらず、社会学はこの問題をあまり重視してきませんでした。本書は、この「共生」の問題をルフェーブルの「都市への権利」などの考えに遡って問い直し、そこにある問題とは何か、どのように解決できるのかなどを、根源から問い直します。その際、具体的な考察の対象となるのが、下北沢という街の再開発をめぐって起きた紛争です。七〇年代以降、独自の発展をしてきたこの街を愛する人々が、行政や企業のやり方に対して、やむにやまれず立ち上がった運動ですが、この町に住む人、地主、商売する人、遊びに来る人など、様々な形で運動に関わる人々へのインタビューを通して、多様な考え方・運動のあることが浮かび上がり、解決への道筋が暗示されます。まだ解決に至っていませんが、理論としてだけでなく、運動の記録としても貴重な、力作です。
「共生」の都市社会学 目次
序章 「共生」をどのように捉えるべきか?
第一章 都市空間の危機的状況/都市社会学の危機的状況
1 都市空間の危機的状況
?@ 都市空間における「排除」
?A 都市空間の「均質化」
?B 都市空間の「荒廃化」
2 都市社会学の危機的状況
?@ 岐路に立つ都市社会学
?A 新都市社会学の問題提起とは何だったのか?
3 なぜ、新都市社会学は隘路に直面したのか?
?@ newest urban sociologyの自己矛盾――「共生」という理論的対象の設定
第二章 都市社会学の方法史的検討
1 初期シカゴ学派における「意味世界
2 日本の都市社会学の方法史的検討
?@ 開発研究における意味世界
?A 住民運動論における意味世界
3 アクティヴ・インタビューの意義と課題
本書における「意味世界」の視角
第三章 「共生」をめぐる「迷宮の盛り場―下北沢」の紛争
1 下北沢地域と都市計画の概要――紛争の社会的背景
?@ 下北沢地域の概要
?A 都市計画事業の概要
?B 反対運動の成立とその展開
2 どのような「共生」の構想が分立し、展開しているのか
?@ 「公共性」をめぐる争いから「共生」の構想へ
第四章 「共生」の構想の社会的世界
1 「歩いて楽しめる空間」という意味世界の背景
2 計画推進側の意味世界の背景
?@ 高層化という経済的合理性の追求の諸要因
?A 「協働」の形骸化と正統化
第五章 「共生」を実現するための構想・運動の可能性と課題
1 三つの政治的な構想
2 対抗型の構想の前史――小田急高架訴訟の意義と課題
3 対抗型、連帯型、イベント型の構想・運動の誕生と展開
?@ 政治的構想の生成と混在
?A 対抗型の運動の成果と課題
?B 連帯型の運動の成果と課題
?C イベント型の運動の成果と課題
?D 対抗型・イベント型の構想とその変化――第一局面の総括
4 対抗型と連帯型の運動の分岐と対立
?@ 裁判闘争という運動の意義
?A 跡地利用をめぐる運動の対立
?B シンポジウムに表われる構想の分化
?C 連帯型の構想の台頭と対立型の構想との分裂――第二局面の総括
5 「ラウンドテーブル」をめぐる構想の対立
?@ 保坂区長誕生という政治機会構造の変化
?A 運動が直面したラウンドテーブル構想の課題
?B 各々の構想・運動の意義と課題――第三局面までの総括
第六章 研究対象者の視点から見た分析の課題
第七章 結論――本書の意義と課題
1 本書の方法論的意義
2 本書の分析的意義
3 本書の課題と展望
注
あとがき
参考文献
資料
事項索引
人名索引
内容説明
街は誰のためにあるのか?知らない間に、大きな道路が計画され、街の姿が一変する。そこに住む人、お店を開く人、訪れる人たちが立ち上がった。東京・下北沢の「再開発」問題である。ルフェーヴルの「都市への権利」などを援用しながら、現代の都市問題に立ち向かう、実践的思索の書。
目次
序章 「共生」をどのように捉えるべきか?
第1章 都市空間の危機的状況/都市社会学の危機的状況
第2章 都市社会学の方法史的検討
第3章 「共生」をめぐる「迷宮の盛り場‐下北沢」の紛争
第4章 「共生」の構想の社会的世界
第5章 「共生」を実現するための構想・運動の可能性と課題
第6章 研究対象者の視点から見た分析の課題
第7章 結論―本書の意義と課題
著者等紹介
三浦倫平[ミウラリンペイ]
1979年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。同大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(社会学)。現在、東京大学文学部助教(社会学)。専攻は地域社会学、都市社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。