内容説明
日本人は情緒豊かだが非論理的。これは日本人の民族としての特徴である。―本当にそうなのだろうか?根強い「日本人論」の通説を比較文化の心理学の成果から徹底検証。文化差にまつわる偏見やステレオタイプから開放されるための、オリエンタリズムの正しい葬り方。
目次
1章 19世紀の亡霊
2章 人間は論理的なのか
3章 「論理的」とはどういう意味か?
4章 東洋人の弁証法
5章 もし東洋人の弁証法的思考傾向が高いとすれば
6章 思考の文化差をどのように説明するか
7章 文化的適応の理論に向けて
8章 終わりに
著者等紹介
山祐嗣[ヤマヒロシ]
1959年石川県生まれ。京都大学文学部卒業後、京都大学大学院教育学研究科博士後期課程学修認定退学、博士(教育学)。神戸女学院大学人間科学部教授を経て、大阪市立大学文学研究院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Kentaro
3
ダイジェスト版からの要約 ホールによれば、文脈利用度が概して西洋では低く、これを低文脈文化と呼ぶ。もし日本人が弁証法的だとすれば、矛盾を文脈によって解消することが可能であるので高文脈文化であると言える。暗黙の了解について、言及しない、明示しないという点では、前提を明示的に列挙する必要がある命題論理学に違反している度合いが高いということになるが、決して非合理ではない。矛盾したものを両立させうるという点でも、命題論理学的ではないが、命題論理学自体が必ずしも合理的ではない。日本人は論理より合理に強いタイプだ。2018/04/15
Bkmker
1
p19 日本人が非論理的かどうかを検討する前に、そもそも人間はどの程度論理的に考えることができるのかという問題を考察してみよう。 から始まって、論理的ってどういうことか、どのような要因が脳のとくに新皮質部分を進化させたか、に触れたりして、面白かった。その後、思考の文化差についてのリサーチ結果を多数提示しているが、文化差を過大視するなよと、違いはあるかもしれないが、民族の優劣も神秘主義もないんだからね、と。著者が言うように、いわゆる日本人論本ではなくて、こういう歯止めも必要だなと思った。2016/04/27