内容説明
危機の時代に安吾が甦る!戦後、学生運動、冷戦終結、そして今日―危機の時代に安吾の文学は繰り返し甦り、読み直されてきた。常に危機的な状況で、自らの「生きる術」を書き付けてきた彼は、自明なものが消え失せ、不透明な未来を抱える現代の私たちに何を伝えるのか?
目次
危機の時代と文学
ファルスの詩学―坂口安吾と「観念」の問題
ファルスは証言する―「風博士」論
坂口安吾と「新らしい人間」論
「バラック」と共同性―「日本文化私観」論
情報戦と「真珠」
空襲と民主主義―「白痴」論
「思考の地盤」を掘ること―「土の中からの話」
暴力と言葉―「ジロリの女」をめぐって
法と構想力―「桜の森の満開の下」論
「トリック」の存在論―「不連続殺人事件」とその周辺
来たるべき文学
著者等紹介
宮澤隆義[ミヤザワタカヨシ]
1978年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。早稲田大学文学研究科日本文学(近代)専攻博士後期課程満期退学後、同大より博士(文学)取得。現在、日本大学法学部助教(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ザックばらん
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若さを感じる。励まされる。2017/06/10
e.s.
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マラブー的主体論的読解。坂口の主体化を、未来からの批判的な効果に求める。しかし、これは資本主義的な時間=利潤の主体化の一パターンではないか。また、農村に関する対談を引き、集団的な個体化のプロセスを論じるが、数ある反動的農村コミューン論とどう差異づけるのか不明瞭であり、新風土記等への詳細な読解が必要と思われる。そして、堕落に価値体系への判断停止を見るが、これはネオリベ的なショックドクトリンにも傾斜する危険性がある。そこに見られる「余白」とは、自由にイデオロギーを書き込めるタブララサ(白紙)にもなりうる。2015/06/01