出版社内容情報
国境を越えて生きるとはどういう体験か?
明治初期から始まったアメリカへの移民は、黄禍論の影響もあり、一九二四年の排日移民法で全面禁止されました。そして日米開戦とともに、日系人は「敵」として強制収容所に入れられました。そのような苦難のなかでも人々は書物、文学を手放すことはありませんでした。むしろ文学が生きるよすがだったのかもしれません。漱石『猫』のパロディ本、有島『或る女のグリンプス』と写真花嫁の話、アメリカ西海岸で活躍した翁久允やハワイ出身の二世作家・中島直人など、今では忘れられた日系移民の文学を掘り起こし、アメリカで刊行された日本語の新聞・雑誌、日本人町に花開いた五車堂などの書店文化の盛況にも言及します。「日系アメリカ移民」という日本とアメリカの文化の狭間で生き、歴史のうねりに引き裂かれた人たちの経験と苦悩を、文学と出版をとおして描出する気鋭の力作です。著者は名古屋大学准教授。
内容説明
かつてブームとなったアメリカへの移民。しかしその後、移民は制限され、開戦とともに日系人は収容所に入れられる。その苦難の時代を支えたのは日本語の文学・書物だった。日本書店、写真花嫁、収容所図書館の話題なども織り交ぜながら、移民と文学の歴史を掘り起こす意欲的試み。
目次
海を越える文学―移民・書物・想像力
1 アメリカに渡る法(移民の想像力―渡米言説と文学テクストのビジョン;船の文学)
2 サンフランシスコ、日本語空間の誕生(日本語新聞と文学;移民と日本書店―サンフランシスコを中心に;ある日本書店のミクロストリア―五車堂の場合)
3 異土の文学(一世、その初期文学の世界;漱石の「猫」の見たアメリカ;永井荷風『あめりか物語』は「日本文学」か?;転落の恐怖と慰安―永井荷風「暁」を読む;絡みあう「並木」―太平洋両岸の自然主義文学)
4 移動の時代に(洋上の渡米花嫁―有島武郎「或る女のグリンプス」と女の移民史;移植樹のダンス―翁久允と「移民地文芸」論;望郷のハワイ―二世作家中島直人;“文”をたよりに―日系アメリカ移民強制収容下の文学活動)
著者等紹介
日比嘉高[ヒビヨシタカ]
1972年、愛知県名古屋市生まれ。筑波大学大学院博士課程文芸・言語研究科修了。博士(文学)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校客員研究員(2002‐03年)。ワシントン大学客員研究員(2009年)。2009年から名古屋大学大学院文学研究科准教授。専攻は日本近現代文学、日系移民文学、出版文化論など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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