内容説明
「私の性格は…」「あいつはあんな性格だから…」行動を理解し説明する魔法のことば「性格」。性格は、時間や状況を超えて変わらないのか?性格研究の総本山とも言える心理学でカンカンガクガク繰り広げられた「性格の一貫性論争」をとおして考える科学の概念と日常のことば。
目次
第1章 性格と心理学
第2章 心理学において、性格概念はどのように用いられてきたか
第3章 一貫性論争―なにが争点だったのか
第4章 性格概念と行動観察との関係
第5章 性格概念の本質とは
第6章 新しい性格研究―その課題は何か
第7章 性格心理学の未来へ
著者等紹介
渡邊芳之[ワタナベヨシユキ]
帯広畜産大学大学教育センター教授。1962年新潟県高田市(現在の上越市)生まれ。1985年東洋大学社会学部応用社会学科卒業、1990年東京都立大学人文科学研究科心理学専攻博士課程単位取得退学。信州大学人文学部助手、北海道医療大学看護福祉学部講師を経て1999年帯広畜産大学畜産学部助教授、2005年より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たろーたん
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性格概念は、性格心理学が仮定したような一貫性を持ち、行動の状況を超えた予測や原因論的な説明に用いられる概念ではなく、観察に還元される傾性概念である。性格は人間の内部にあって行動の原因となる実体ではなく、人間と状況・環境との複雑な相互作用の結果として生じた行動パターンであり、その行動パターンを生み出した個人の歴史や他者の関係性を説明するための比喩・メタファーである。つまり、我々が考えるような「明るい性格だから○○した」みたいな考えを性格心理学は基本的にはしない。2022/05/29
アン・シャーリー
2
「傾性概念」と「理論的構成概念」の話が大きな内容。傾性概念とは「ある先行条件のもとで事象に観察された規則性をその先行条件も含めて抽象的に記述した概念」と書くとよくわからないが、つまり(よくある)性格診断というのはある条件のもとで彼がどう反応するかを記述しただけであってその先行条件を含まない説明をすることはできない。一方性格判断が「理論的構成概念である」とは特定の状況を越えた予測や原因論的な説明をすることができるということ。2016/01/01
noin
2
心理学で扱われてきた「性格」について書かれた本。中心的な内容は「一貫性論争(人か状況か論争)」について。質問紙法に基づく性格検査は性格の認知を計測するものであるのに、それを性格そのものと仮定していること、状況と性格の関連性を無視し、状況に依存しない通状況的性格を仮定しているなどといった特性論の問題点を指摘している。心理学を全く知らない人にはすこし難しいかもしれないが、わかりやすくおもしろい内容だった。2011/08/20
ひろか
2
性格というもの(日常的に使われる言葉)を心理学ではどのように考えてきたか、歴史も含めて論じてある。博士論文が下地なので、読みやすいが奥が深い。2011/08/10
hudita t
1
「性格概念については、そうした [日常概念を科学研究に取り入れる際の] クリーンアップが足りなかった結果、 (...) 一貫性論争を招く結果になった」(p. 123) 「[古典的学術書を読むときの] 『すでに書かれている』という感覚は (...) 人文学に特有のものであって、 (...) 不断の進歩を仮定し過去を切り捨てることで前進していく自然科学にはあまり共有されない (...) 。 (...) 性格心理学は科学である以前に人文学である」(p. 175) イイネ!2015/08/15