出版社内容情報
「日本人は集団主義的、アメリカ人は個人主義的」という通説がなぜ流布するようになったのか、社会心理学的に分析。
内容説明
広く流布する日本人論の検証を通して明らかになった、状況の力と思考のバイアス。国家、民族間に溝をつくりだし、しばしば政治的な対立を激化させる文化的レッテルへの警鐘。
目次
第1章 「日本人=集団主義」説(日本人論;日本人論批判)
(実証的な研究;論争;「集団主義的な文化」再考;エピソード;昔の日本人)
第3部 通説はなぜ成立したのか?(戦時下の集団主義;思考のバイアス;オリエンタリズムとしての「集団主義」)
第4部 「文化」の再検討(「国民性」;文化ステレオタイプ)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
阿呆った(旧・ことうら)
14
言語学、歴史解釈、経済成長時の貿易摩擦、オリエンタリズム、バイアス・ステレオタイプから『日本人は集団主義、アメリカ人は個人主義』に反駁している。2017/03/09
ムカルナス
10
日本人が集団主義で米国人が個人主義という説は誤りで個人差や個人が置かれた状況による差の方がはるかに大きい。にもかかわらず定説となった背景には近代ヨーロッパ社会で個人主義イデオロギーが誕生し高いプラスの価値観を持つようになり、他の社会を「集団主義」とみなすようになったことにある。開国以来、欧米の全てを取り入れてきた日本はこの考えをも受け入れ、日米貿易摩擦においては日本異質論を背景に日本バッシングが行われることになる。人種間の紛争は往々にして相手の文化を劣位と見做して敵意を煽ることが行われると著者は警告する。2020/08/03
coolmonster
10
一つ一つ、丁寧に勘違いを論破していく方法に感服。基本的には、人間の思考・行動パターンには差がないのでは、と目が開かれた。2014/09/27
ぽん教授(非実在系)
7
「日本人=集団主義/アメリカ人=個人主義」がステレオタイプであり実際はそうとは言えないことは既に山岸俊男が説明している(cf『安心社会から信頼社会へ』)。本書の真骨頂は、様々なタイプの日本人=集団主義論を整理したうえで、何故このステレオタイプが形成されたのか?という最も根源的な問いを掘りに行っているところである。それは欧米のオリエンタリズム、ルース・ベネディクトの観察ミス、日本=まだ近代でない論などが様々な形で複合した結果出来上がったものであった、と著者は結論付ける。最後は認知心理×思想史でさえある。2019/03/29
き
6
個人主義は西欧の近代化、中世からの脱却に欠かせない概念で、彼らが相対的に近代化していないと考えた東洋に対して集団主義のレッテルを無意識に貼るのはさもありなん。それを日本人が戦後に批判なく受け入れてしまったのが、今日日本人集団主義説が強固に根付いた原因か。文化や国民性の影響力を考える上で大変示唆に富んだ一冊。2019/01/12