出版社内容情報
戦前では天皇を「愛護する」アマテラスが至高の権力表象にされ、国民統合が「より早く」進んだように、戦後も経済戦争を勝ち抜くために「専業主婦」が再度理想化され、やがて「高学歴専業主婦」というフランスにない表象が女の生き方のモデルにされていく。現在のところ「男女共同参画」の推進下にあって、このモデルを実現できるのは、少数エリートの妻たちである。それでも国家政策から簡単に消えないのは、現在の経済的な世界化の中で日本が生きぬくのに必要だと政府が思っているからだ。このように、制度や法体系と実施される個々の国家政策との「ずれ」を見るには、女と表象や権力との関わりを日仏比較しながら分析するのが適当だろう。というわけで、私たちの日本についての最初の本は、権力と表象の主題をめぐっている。(「序文」より)
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【関連書籍】
『 ワードマップ エスノメソドロジー 』 前田泰樹ほか編 (定価2520円 2007.8月)
『 アイデンティティの権力 』 坂本佳鶴恵著 (定価3675円 2005)
『 フェミニズム 』 江原由美子ほか編著 (定価2730円 1997)
内容説明
日本にはフランスにない政治権力のジェンダー表象がある!女帝、妻の座、皇后、戦争チアガール、高学歴専業主婦など、危うい主体化をなしとげてきた日本の女たち。「われ知らず」権力に同化してきた近現代の苦い歴史にも踏み込む。フランス女性思想を手がかりに、日本ジェンダー史像に迫る新鮮な試み。
目次
第1部 日仏比較の方法―文化間のずれと誤解をめぐって(対話的な普遍に向けて―フランスと日本 近代性との関係のふたつのあり方;男女関係と国際比較―差異の概念は何に役立つのか;『国体の本義』読解―西洋の世界性・日本の特殊性;日本型近代家族の変遷?―比較史の可能性と問題点)
第2部 日本ジェンダー史の再検討―権力と女性表象(古代の政治権力と女性;女性の位置とその変遷―平安時代から江戸時代まで;近代天皇制国家と性別二文化―女性の役割表象と対抗形態;「銃後」の女性と植民地主義;現代日本の家族とその解体―女性作家と女性漫画家の作品から;「高学歴専業主婦」のゆくえ)
結論
日仏女性研究シンポジウム報告 日本の女性たちが発言する!―「権力と女性表象」二〇〇〇年十二月・パリ
著者等紹介
棚沢直子[タナサワナオコ]
東洋大学経済学部教授、日仏女性研究学会会員。専攻:フランス思想・日仏比較思想
中嶋公子[ナカジマサトコ]
十文字学園女子大学非常勤講師、日仏女性研究学会事務局代表。専攻:ジェンダー論・日仏比較女性研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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