出版社内容情報
ジェンダーや階級などの今日的な視点から、暴力をめぐる小説や思想を読み解くことはいかに可能なのか。他者の痛みを描く文学を介して、私たちがそれらの経験を分かち合うことはできるのか。
戦前のアナキズム思想やフェミニズム、プロレタリア文学、戦後の大江健三郎や井伏鱒二、井上ひさしの作品などを「暴力をめぐる記録/記憶」として読み解く。そして、「歴史」「戦前・戦後」などの時間の視点からそれらの作品や思想に介入し、批判的に検証する。
それらの実践を通して、女性への差別や抑圧される身体、歴史の語りとホモソーシャル、異性愛主義体制の再生産、戦争の記憶など、暴力やジェンダーの問題を私たちの目の前に出現させる。忘却に抗い、痛みの経験や暴力の痕跡を分かち持つための想像力を呼び起こす文学研究の成果。
内容説明
戦前のアナキズムやプロレタリア文学、フェミニズム、戦後の文学作品を「歴史」「戦前・戦後」などの視点から批判的に検証する文学研究・ジェンダー批評。
目次
時間に/で介入する
第1部 運動/性/階級のポリティクス(フェミニズムとアナキズムの出合い―伊藤野枝とエマ・ゴールドマン;プロレタリアの「未来」と女性解放の夢―性と階級のポリティクス;残滓としての身体/他者―平林たい子「施療室にて」と「文芸戦線」)
第2部 暴力を描く地点(強制労働の記憶/記録―松田解子「地底の人々」;歴史の所在/動員されるホモエロティシズム―大江健三郎『われらの時代』にみる戦争の痕跡;「戦時」をめぐる歴史的時間の編成―井伏鱒二「黒い雨」;未来を語る/語らないこと―井上ひさし『父と暮せば』)
著者等紹介
中谷いずみ[ナカヤイズミ]
1972年、北海道生まれ。二松学舎大学文学部准教授。専攻は日本近現代文学・文化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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