内容説明
建築分野からアプローチする近代都市史の研究の中核となってきたのは、都市計画史である。これまでその研究がもっぱら扱ったのは、構想が成立するまでであった。しかし、最近になり、その構想が、実際の生活空間に放り込まれた後の過程を詳細に辿る研究が進むようになってきた。その過程とは、最初の企てを「空想」として見立てれば、それが実際に都市空間に落とし込まれて、現実の「計画」となっていく過程だと捉えられるのではないか。そう考えると、その過程にこそ、近代都市史研究の根幹をなすテーマが見出せるのではないか。編者・中川理のこうした認識を「お題」として、本書の25本の論考は集められた。都市を読みとく、より広範で自由な議論を立ち上げる契機とするために―。
目次
1 思念―思い描いた夢(大原孫三郎の田園都市構想と倉敷の都市計画;大正期京都のロマン主義と竹久夢二 ほか)
2 周辺―夢が託される場(神戸市塩屋における外国人住宅地の開発と変容―「ジェームス山」の誕生;近代鎌倉の道路整備にみる「観光」と「住みよさ」の相克―日本自動車道路と新旧の住民 ほか)
3 復興―自律と制御のなかで(戦災都市における復興構想と神戸の都市計画;闇市転生を「空想」する―松本学の日本ヴォランタリー・チェーン構想と東京のテキヤたち ほか)
4 構造―地域と建築の変容を捉える(大阪新田地帯の近代―土地経営と地域社会構造の変容をめぐる空間論的転回;大阪・船場の改造と都市建築―第一次大阪都市計画事業における三休橋筋の拡幅を事例として ほか)
5 交通―持ち得た役割(明治期築港が目指したもの―東京・横浜の艀運送との関係から;近代京都の道路拡築事業と町 ほか)
著者等紹介
中川理[ナカガワオサム]
1955年生。京都大学大学院工学研究科建築学専攻博士後期課程修了。工学博士。京都工芸繊維大学デザイン・建築学系教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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