内容説明
中世の禅僧たちがもっていた卓越した経営手腕や知識・技術は何に由来するのか?本書は、禅宗寺院で経営を担当した東班衆の経済活動だけでなく、西班衆の「学問」にも目を配り、禅宗寺院や足利学校で行われた講義の口述記録「抄物」をひもとくことによって、それが中世禅宗の学問、とりわけ儒学学習と密接に関わっていたことを明らかにする。禅宗寺院では、儒学に付随して農業や数学、医学などの実用的知識が学ばれていたのである。経済活動と学問、中世禅宗の二つの側面を架橋することで、禅宗寺院の果たした役割の全体を明らかにするとともに、近世につながる科学知識の萌芽についても見通す。
目次
中世の禅宗と儒学をめぐる研究状況
第1部 禅僧の経済活動と知識形成(南北朝期における東班僧の転位と住持;室町期における東班衆の嗣法と継承;禅僧の荘園経営をめぐる知識形成と儒学学習)
第2部 禅僧の儒学と足利学校(中世後期関東における儒学学習と禅宗;足利学校と伊豆の禅宗寺院;道庵曾顕の法系と関東禅林の学問;足利学校の論語講義と連歌師)
第3部 儒学に付随する科学知識(江西龍派の農業知識;月舟寿桂と東国の麦搗歌;桃源瑞仙と武家故実の周縁;禅僧の数学知識と経済活動;中世禅僧の数学認識)
室町の文化から江戸の科学へ
著者等紹介
川本慎自[カワモトシンジ]
1975年、岡山県生まれ。2000年、東京大学大学院人文社会系研究科修士課程修了。現在、東京大学史料編纂所准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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中村蓮