出版社内容情報
日本の歴史上、近世ほど多種類の貨幣が流通した時代はない。金・銀・銭という幕府制定の「三貨」、近世初頭の大名領国にみられる金銀貨「領国貨幣」、藩札や私札の紙幣などを加えればその数は膨大である。さらに銭については、地域独特の数え方もあった。こうした複雑さのいっぽう、近世の権力は貨幣制度を確立したとも認識されている。本書は、この一見矛盾する貨幣の特質を明らかにすることを試みる。
近世貨幣はどのように生まれ、流通し、終焉をむかえたのか―。一国一通貨という貨幣観を解きほぐし、その独自の機能や意味づけを問いなおす良著。
序章 課題と方法
本書の課題/通貨への関心と貨幣史研究の動向/研究史にみる貨幣観/本書の研究視角/本書の構成
第1部 貨幣の統合と多様性
第1章 三貨制度の成立
三貨制度とは何か/儀礼的貨幣の系譜と定着/通貨の整備過程/武家の国家の貨幣体系
第2章 貨幣の地域性と近世的統合
幕府の貨幣と領国の金銀/京銭=鐚銭による銭貨統合/銅銭輸出とその停止/新銭鋳造計画/寛永通宝の発行と流通
第3章 地域からみた近世中後期の通貨事情(一)―播磨を中心に―
一七世紀における鉱山と銀の流通/一八世紀以降の貨幣流通の変化/札遣いの普及とその特色/西播、安志藩銭札の貸付
第4章 地域からみた近世中後期の通貨事情(二)―伊予の場合―
東予と別子銅山の流通貨幣/銭匁勘定の普及と藩札(銭匁札)の流通状況/幕末期の通貨変動とその影響/維新期―新たな統合へ―
第2部 貨幣の機能
第5章 金銀貨の機能とその展開
近世貨幣の特性/経済的機能の深化/対外関係と貨幣の政治的意味
第6章 貨幣改鋳と新旧貨引替機構―文政期、十五軒組合の設立を中心に―
組合設立の前段階/十五軒組合の成立/組合による引替の開始とその実態
第7章 近世初期の撰銭令と銭貨の機能
江戸幕府撰銭令の系譜/幕府の街道・宿駅整備と撰銭令/銭の交通上の機能/京銭による銭貨統合の時代/寛永通宝の発行事情
第8章 貨幣の社会的・文化的効用
儀礼的貨幣の展開/身分的な財の流動化/都市経済の新展開/貨幣からみた都市文化
第3部 寛永通宝の鋳造と流通
第9章 寛永通宝の第一次鋳造
新銭鋳造の動き/寛永通宝の発行/諸大名の対応/鋳造停止とその事情/寛永飢饉と銭貨流通
第10章 寛永期の大坂銭座
大坂における銭座の開設/銭座と錫輸入/銅輸出解禁への模索と銭座の停止
第11章 享保期、大坂難波銭座の鋳銭
従来の見解と典拠史料/通説の問題点/『古記録』所収史料による再検討
第12章 真鍮四文銭の鋳造と流通
第一次鋳造高の再検討/真鍮四文銭の流通域
終章 まとめと展望
近世貨幣の特質/近世貨幣の終焉
安国 良一[ヤスクニ リョウイチ]
1953年生.京都大学博士(文学).現在,住友史料館副館長.
内容説明
日本の歴史上、近世ほど多種類の貨幣が流通した時代はない。金・銀・銭という幕府制定の「三貨」、近世初頭の大名領国にみられる金銀貨「領国貨幣」、藩札や私札の紙幣などを加えればその数は膨大である。さらに銭については、地域独特の数え方もあった。こうした複雑さのいっぽう、近世の権力は貨幣制度を確立したとも認識されている。本書は、この一見矛盾する貨幣の特質を明らかにすることを試みる。近世貨幣はどのように生まれ、流通し、終焉をむかえたのか―。一国一通貨という貨幣観を解きほぐし、その独自の機能や意味づけを問いなおす良著。
目次
第1部 貨幣の統合と多様性(三貨制度の成立;貨幣の地域性と近世的統合;地域からみた近世中後期の通貨事情(一)―播磨を中心に
地域からみた近世中後期の通貨事情(二)―伊予の場合)
第2部 貨幣の機能(金銀貨の機能とその展開;貨幣改鋳と新旧貨引替機構―文政期、十五軒組合の設立を中心に;近世初期の撰銭令と銭貨の機能;貨幣の社会的・文化的効用)
第3部 寛永通宝の鋳造と流通(寛永通宝の第一次鋳造;寛永期の大坂銭座;享保期、大坂難波銭座の鋳銭;真鍮四文銭の鋳造と流通;まとめと展望)
著者等紹介
安国良一[ヤスクニリョウイチ]
1953年神戸市生まれ。1977年京都大学文学部卒業。1984年京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学。2012年京都大学博士(文学)。現在、住友史料館副館長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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