内容説明
漱石は時代きっての英国通であった。そしてイギリスの文学のみならず、その文化現象全般から、どの作家よりも多くの影響を受け容れた作家であった。と同時に、『文学論』や『文学評論』、そしてもろもろの断片にあらわれているように、イギリスの文学や文化を見るのに、独自の批評眼をもつ作家であった。そのありようは当然、生半可な西洋文学の受容や模倣に対する鋭い批評に通じるだろうし、何よりも彼自身の創作において「模倣と独立」の問題と、最も真剣に、きびしく向き合わねばならなかったことを意味するのである。
目次
小説美学としての「非人情」―『草枕』の成り立ち
『吾輩は猫である』におけるメランコリーと神経衰弱
「甲羅ノハヘタル」暗示―『心』「琴のそら音」の深層
奇人たちの饗宴―『吾輩は猫である』とT.L.ピーコックの「談話小説」
漱石の『坑夫』とゾラの『ジェルミナール』―創作ノートと調査資料
「カーライル博物館」論―明治期のカーライル受容を視座として
漱石の薔薇戦争
著者等紹介
松村昌家[マツムラマサイエ]
1929年生。大阪市立大学大学院修士課程修了。大手前大学大学院比較文化研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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