内容説明
小説が映画になるってどういうこと?『華麗なるギャツビー』から『インヒアレント・ヴァイス』まで、現代アメリカの文学と映画を中心に、トマス・ピンチョンの専門家がわかりやすく解説!板書を見ながら講義を受けているような、チャート17点!アダプテーション論をさらに学びたい人のために…リーディング・リスト付き。小説と映画はこんなにちがう!…スクリプトと小説のシーン比較付き。
目次
序章 映画化とは原作化のこと
第1章 アダプテーションとトランスレーション
第2章 原作者の反応
第3章 アダプテーションと進化論
第4章 インターテクスチュアリティの快楽
第5章 長すぎる「原作」はどうすればいいのか
第6章 アダプテーションの固有の瑕疵
終章 原作が作者不詳となる日まで
著者等紹介
波戸岡景太[ハトオカケイタ]
1977年生まれ。明治大学専任准教授。千葉大学卒。慶應義塾大学大学院修了、博士(文学)。専門はアメリカ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
73
批評家ハッチオンのアダプテーション(適応)理論をヒントに映画化された作品を考察。軽めの評論。レッドフォード主演とディカプリオ主演の映画「グレートギャッピー」のシーンや「ファイトクラブ」の比較など多数の作品例の仕掛けや工夫を明快に解説。原作そのものを逐次的に移し替えること(翻訳)ではなく、別の媒体にエッセンスを適応させたものが良い映画化作品と解釈したい。映画製作者側の意図や工夫についていろいろ感心した。薄い本で読みやすいのだが内容は深く広い印象。2017/12/04
三柴ゆよし
17
これは小説好き、映画好きいずれの側からも読まれるべき良書。小説から映画への移行を、AからBへの単なる翻案ではなく、創造的な営みとして読み解いていく、アダプテーション理論の入門書。原作たる小説があって映画が生まれるという、私たちがわりと普遍的に陥りがちな思考について、いや、そうではなくて、そもそも映画が作られてはじめて小説は原作になるんだよ、というのが本書の入り口の入り口。もうすこし実践の部分を読みたかった気がしないでもないが、それでも『インヒアレント・ヴァイス』の読解は相当にスリリングでおもしろかった。2017/12/15
vaudou
12
いろいろ腑に落ちて勉強になる。少なくとも、この映画原作に比べて・・と思ったことのある人なら読んで損はないだろう。小説から映画へのアダプテーション(翻案)をタイプ毎に分け、映画化に際して力点が置かれたポイントや、いかに換骨奪胎が成されたのかを明らかにするのだが、これが面白い。短絡的な比較論への戒めとして、そして特性としてこれだけ違うということをハッキリ示してくれる。映画化を「新しい環境に適応するためのプロセス」とみなし、その楽しみ方と未来にまで見通しをきかせる、画期的な一冊。 2017/12/16
サイバーパンツ
8
原作への忠誠を誓うトランスレーションと、原作への裏切り行為としてのアプロプリエーションを掛け合せて、物語(小説)を新たなる環境(映画)へと適応(アダプテーション)させる。原作は映画化によって生まれるというところから出発し、ハッチオンの『アダプテーションの理論』を実際に映画と小説の比較を行いながら紹介している短めの評論書(このこと自体一種のアダプテーション)。『ファイト・クラブ』の文体と演出や『帝国のベッドルーム』のメタ構造の話が面白かった。2018/09/26
のれん
5
原作の再現は映画化の命題の一つではあるが、それを行えない理由は多々あることを、分かりやすく説明している。 原作再現は既に原作となってしまった小説を映画と同一させてしまうなどという問題も興味深い。 こういったジャンルは個人的に非常に新鮮。2017/12/08