内容説明
異なる文化の力学関係を歴史的文脈でとらえなおす通史。冷戦期からベトナム戦争、9・11…。ポストモダニズムとその「文化翻訳」的展開。
目次
序 ポストモダニズムから文化翻訳
第1章 冷戦からポストモダニズムへ―『キャッチャー・イン・ザ・ライ』
第2章 カウンターカルチャーと初期ポストモダニズム―『サージェント・ペパーズ』、パレルゴン、「エントロピー」
第3章 レーガンとマドンナのアメリカ―『ヴァインランド』、『ホワイト・ノイズ』、『黒い時計の旅』
第4章 ポスト・ホロコーストのユダヤ系移民のアメリカ―『マウス』、クラウンハイツ暴動
第5章 ベトナム系アメリカ文学の現在―「モンキーブリッジ」、『ブック・オブ・ソルト』
第6章 九・一一以降のベトナム戦争―『煙の樹』、『グラン・トリノ』
結び 文化の翻訳に向けて―ソフィーの『ゲルニカ』、『モット・コイ・ディー・ヴェー』
著者等紹介
麻生享志[アソウタカシ]
1965年東京生まれ。ニューヨーク州立大学バッファロー校博士課程修了(比較文学)。早稲田大学教授。現代アメリカ文化・文学研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Ecriture
11
ビートルズやサリンジャーなど60年代の理想主義的・カウンターカルチュラルなポストモダニズムから、リベラル派の挫折を経て保守的・帝国的・覇権的で全世界の事物や文化の商品化を推進する動きともとれるエリクソンやデリーロら70~80年代型ポストモダニズムを経て、スピーゲルマンやラン・カオやモニク・チュオンなど1.5世代以降に母国やアウシュヴィッツの原体験に「ポストメモリー」を通してつながるマイノリティのポストモダニズムがあり、それにアメリカ白人が応答するかのような『煙の木』や『グラン・トリノ』分析へ。2013/07/22
ポカホンタス
5
グローバル化するアメリカ文化の中で、異文化は翻訳されてつぎつぎと取り込まれていく。多種多様のハイブリッドが生み出される。そのようなプロセスを「文化翻訳」として捉えて分析。在米のベトナム人の話が興味深かった。翻訳とは「一つの身体に二つの文化を刻むこと」。2011/09/04
の
1
第二次大戦以降のポストモダニズム文化の形成と発展に加え、近年のアメリカ文化における「文化翻訳」的転回を幅広いジャンルのなかに読み解いたもの。合衆国と合衆国と対立するもの、二つの対立によって文化が分裂し、「異文化」が生まれる。その異文化は共産圏のようなアメリカの敵国から、自国の伝統・制度を否定する新興勢力まで数多く存在する。そうした異文化との境界線が時代を経ることで曖昧となり、最終的に変化してアメリカ文化に取り込まれることでポストモダン化する。ポップカルチャーがふんだんに盛り込まれているので読みやすかった。2012/01/27
まろ
0
序と第四章はあとで見直そう。「ポストモダン」というあまりにも広く曖昧な概念の理解に一歩だけ近づけた気分になった。(気のせいかもしれない)2015/01/04