出版社内容情報
「恐怖や脅威は、私の小説の主要なテーマのひとつだ。特定の人間に対して感じる恐怖ではなく、見知らぬ環境や状況がもたらす恐怖だ」 小説家としての私のキャリアにおける最大の事件は、モロッコへ出かけたことと、グアテマラで生まれたことだと思っている」
ロドリゴ・レイ・ ローサ
内容説明
ぎりぎりまで彫琢された、密度の高い簡潔な表現の極致!ポール・ボウルズが自ら英訳を買って出たグアテマラの新進作家、初紹介。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nbhd
19
これはけっこう好きかもしれない。グアテマラに生まれ、モロッコに渡った作家の小説。「腑に落ちない」具合が最大の魅力かなと思う。ハッと目が醒める鮮やかなタイトルにあるように、何人かが殺される物語。だけれど「一体なぜ殺されたのか」がよくわからない。40年間近く続いた内戦や先住民の虐殺といったグアテマラ現代史に精通していれば、もっと良い読み方ができるのかもしれないけど、逆に「知らないこと」が戦慄とか情緒を誘い、「殺され…」に静かな叙情を醸すといったかんじだ。「世界に通用しない」ことにおいて「世界に通用する」作品。2016/12/02
長谷川透
18
グアテマラに生まれ学業を終えた後に内戦の続く母国を去り、ニューヨークを経てモロッコに腰を据えた作者の人生を切り取ったかのような作品だ。彼のいる空間は銃器に満ちた世界ではないが、遠い母国の情勢不安が伝播しているかのように空気が不穏の色に染まっている。『その時は殺されて……』という題は、彼の人生をある所で切断され、かつての故郷での記憶を断絶されたかのような印象を受ける。しかし過去を殺してもなお脳裡で止まない残響からは逃れることはできないし、自身に纏わりついた土着的なものからも逃れることはできないないのだろう。2013/11/10
カイロス時間
11
レイローサ、やっぱりおもしろい。でも感想を書くのが難しい。簡潔かつ暗示的な文体と余韻を残す展開が心地よいのだけど、それゆえに手をすり抜けていくように感じ、しっかりとボディを捕まえられない。物語自体も、コンパクトなのに大きく拡がっていて要約しにくい。でもそれがそのままレイローサの良さでもあると思う。3作品を読んで良いと感じたことをいくつか。インターナショナルな舞台・人物設定で多様な視点を確保できること。そうやって出来た複数の視点から祖国が抱える問題を浮かび上がらせる手法。人生に潜む危険と際どい瞬間の描き方。2021/09/05
勉誠出版営業部
2
ロドリゴ・レイローサの『その時は殺され…』を読了。グアテマラ出身の作家による中編。話の核はあるはずなのに、何故か断片的な印象が強い、不思議な作品。2014/04/04