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内容説明
独裁者・フランコ将軍の死の翌年(1976年)に刊行されるや、因習と宗教に制約された地方都市に育った一少年の成長物語としての本書は、一大ベストセラーとなった。読者は、ここに、スペインという国そのものの歩みを読み取り、同時に、来るべき新しい時代の息吹を感じ取ったのである。
著者等紹介
ウンブラル,フランシスコ[ウンブラル,フランシスコ] [Umbral,Francisco]
1932年生。スペインの作家、評論家。青年期までを地方都市のバリャドリードで過ごし、1961年からはマドリードを拠点として文筆活動を行う。1975年にフランコ独裁政権が終わり、スペインが民主主義国家として生まれ変わると、その文化形成に大きな役割を果たすことになる革新系の日刊紙『エル・パイス』のコラムニストとして活躍し、最新の文化事象や当世風俗を自在に論じていちやくスター作家となった。膨大な量のコラムに加え、エッセイ、伝記、評論、小説などを発表し、単著だけでも100冊を超える。2007年没
坂田幸子[サカタサチコ]
慶應義塾大学文学部教授。専門はスペイン文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
seacalf
45
『間段なく崇高に』誰しも記憶のどこかに残っているに違いない、痛々しいまでの真っ直ぐさと思い詰めやすい年頃の日々を。スペインから届いた一風変わった青春小説。地元の文学名士ダリオ・アルバレス・アロンソ、その美貌で市場の女王として君臨している魚屋の娘マリア・アントニエッタ、ストラディヴァリウスを弾く老音楽家エンペドクレス、ベッドな中では石鹸の泡や泉の水のように爽やかなカルメンシータ・マリア、様々な出会いと経験を経て、少年は成長する。気位が高くて素直さと可愛げが足りないところが万人受けしないが、珍しい本が読めた。2020/10/27
syota
34
読友の方のレビューで知った本。フランコ将軍とカトリックが絶大な力を振るっていた1940年代末のスペインが舞台。作者の分身と思われる没落した中産階級の文学少年が、世間のいろいろな人物と知り合い、オトコになり、大人への階段を登って旅立つまでを描いた作品だ。少年の一途さや背伸び、羞恥、逡巡など、内面の葛藤が手にとるように描写されていて、共感する場面が多い。また、因習や宗教的道徳観に縛られた保守的階級社会と開放的なラテン気質とのせめぎ合いなど、スペイン色も濃厚。エンタメ性と内面性を両立させた優れた青春小説と思う。2020/10/05
刳森伸一
6
少年期から大人になるまでの自伝的青春小説。性の目覚めや、作家になるという夢や、常に崇高であろうとする(滑稽な)意思などが青春期特有の愚かさと清々しさの中に語られる。特別な小説という訳ではないが、個人的にはこの種の青春小説は好きで、その中でもかなりの上位に入る。2018/12/17