内容説明
ポル・ポト体制のカンボジアを奇跡的に生き延び、クメール・ルージュの体験を映像化する仕事で世界的な名声を得た映画作家が、初めて自らの少年時代の記憶を語る。1万数千人を殺害した政治犯収容所元所長の言葉に触発されて甦る、家族や生活のすべてを失った苦難の記憶。人間の消去に立ち向かい、歴史はいかにして「真実」を紡ぐのか。2013年度『ELLE』読者賞、2012年度フランス・テレビジョン・エッセイ賞ほか受賞。
著者等紹介
パニュ,リティ[パニュ,リティ] [Panh,Rithy]
プノンペン生まれ。1985年、IDHEC(高等映画学院)卒業。最新作:『消えた画クメール・ルージュの真実』2013年。カンヌ映画祭「ある視点」部門賞受賞
バタイユ,クリストフ[バタイユ,クリストフ] [Bataille,Christophe]
1971年生まれ。小説家、編集者。代表作に『安南―愛の王国』1993年度小説新人賞、ドゥー・マゴ賞受賞
中村富美子[ナカムラフミコ]
パリ第10大学文学部博士課程中退。ジャーナリスト、大学講師。フランス2の番組制作のほか、週刊誌、月刊誌等に執筆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆき
8
吐き気しかしません。しかも、ポル・ポト死んだのって1998年じゃないですか。最近です。読んでも、読んでもやっぱり良く分からない。マルクス主義が悪いのか?もう、拷問して、殺す意味が全く分からない。2015/06/04
ウメ
5
クメールルージュの惨劇。被害者から加害者へのインタビューは、理不尽に奪われた命への怒りがにじみ出ている。加害者の記憶の歪曲がひどすぎる。自身の過去を直視しないのは、犯した罪があまりにも重いことを自覚しているからだろうか。2019/12/25
テツ
4
ポル・ポトとクメールルージュによりカンボジアに何が起きたのか。著者の体験談とクメールルージュの拷問処刑施設の所長の証言が淡々と語られていく。フランス留学経験もあるインテリのポル・ポトは当初はある程度理想に燃えていたのだろうし自国民に対するジェノサイドなど考えてもいなかっただろうに、どこの時点で歯車が狂っていったのか。彼自身も資金源としていた麻薬を常習するようになっていたという話も読んだけれどそれだけが原因とは思えない。大衆は英雄を求めるものだけれど、個人に大きな力を持たせるのは恐ろしいな。2015/06/18
トモ。
1
小学生の時に映画「キリング・フィールド」を見て、ただただ恐ろしくて、「カンボジアは一生行かない!!」と思っていたんですが・・・そのカンボジアに行ったのは今年の5月。観光地化されていて、恐ろしさはまったく感じませんでした。しかしガイドさんからは恐ろしい歴史のお話を聞かせていただく機会があり、やはりこの歴史は忘れてはいけないなぁ、と感じました。子どものころのトラウマを映画にする著者。とても苦しかったと思います。虐殺を指示した男へのインタビュー。表面的には静かなのが、著者の内包する怒りをより感じて悲しかった。2015/08/18
ふくさん
1
約40年前革命後カンボジアで起きた大虐殺。その数170万以上、虐殺を逃れた映画監督と作家による共著。最大の監獄(処刑所)S21の責任者とのインタビューとリティ(映画監督)の回想である。ロンノル政権を打倒したクメールルージュ(革命軍)を人々は歓呼で迎えた、しかし革命家は冷ややかであった。実行された地獄の選別と粛清。世界の知識人は無邪気にこの革命を讃えた。列強の無関心の下、想像を絶する蛮行。虐殺の主犯大幹部2被告の終身刑が先日ひっそりと下された。こうして歴史は風化してゆくのか。決して忘れてはならない。2014/08/11