内容説明
その凶暴さにおいて比類なきチリ軍事クーデターは1973年9月11日に実行された。米国の支援を受けて―それから25年後、ロンドンでジェノサイドの容疑でスコットランドヤードに逮捕された軍事政権の中心人物、ピノチェト将軍の裁判をめぐるサスペンス・ドキュメント。
目次
ピノチェト将軍の信じがたく終わりなき裁判
ファースト・エピローグ チリの影
セカンド・エピローグ 圧制者たちへの長いお別れ
著者等紹介
ドルフマン,アリエル[ドルフマン,アリエル][Dorfman,Ariel]
1942年、アルゼンチンに生まれる。45年米国に移住。マッカーシー時代にチリに移住し、後年チリ国籍を取得。アジェンデ政権時代には、官房長官の顧問を務める傍ら、コミックや児童文学を対象に、文化帝国主義の批判的な分析を行なって、すぐれた成果をあげた。軍事政権下では亡命を余儀なくされ、アルゼンチン、オランダ、フランスなどを転々とした後、米国に定住した。その間に、表現活動は小説、戯曲へと広がる一方、政治的・社会的な発言も活発に行なった。現在は米国のデューク大学教授としてノースカロライナ州ダーラムに住み、チリとも行き来している
宮下嶺夫[ミヤシタミネオ]
1934年京都市生まれ。慶大文学部心理学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あくび虫
2
『死と乙女』の公演に衝撃を受けたのは昨年のことですが、今でも脳裏から離れないほどに強烈でした。その著者による本書、こちらもドラスティックなほどに強烈です。――どちらにも言えることですが、とにかく心を揺さぶられる。片手間で読み飛ばすことを許さない熱。激情を含んだ誠実さと慎重さ。ぬぐい切れない苛立ち。こちらを直視してくるような言葉の圧。文字になり、翻訳を経てもなお生々しく力強いです。――ふと『お気に召すまま』を思い出しました。「世界という劇場には私たちが演じている一場よりもはるかに悲惨な芝居がかかっている」2020/05/03
SUZUTOMO
0
先日見た映画「真珠のボタン」と「光のノスタルジア」に感化されて。人間ってどこまで残酷になれるのだろう?そして、自分らが犯した罪を時間とともに忘却させていくことは本当に良いのだろうか?忘れたほうが幸せ? 何よりも強く残った内容は、「その事実が起きた責任が自分にもある。」歴史もそう。今もそう。目の前の忙しさを免罪符に世の中の事を知らなかったで済ませるのは罪だ。知らなくて良いと自分から見ようとしなかっただけ。世界の何かを変える力は無くても、少なくとも自分が今の時代の一員である、その責任を忘れてはいけない。2015/11/23
うりきち
0
先日、作者の代表作「谷間の女たち」を見た。新国立劇場では「線のむこう側」も見ている。そのときにはさして作者の背景を気にもしなかったが、今回は違った。それがなぜかはともかく、このそう厚くもない本を読み終えるのには時間がかかった。作者自身が知っていた人達だけではない、何千何万人もの人々の「なぜ?」という問いだからだと思う。いま現在、岩波ホールでチリのドキュメンタリーを2本上映している。星とこの大地と人とを描き必見。2015/11/05
かばこ
0
チリの独裁政治のお話。。。読後感は気持ちの良い物ではなかった。ただ現実に起きたこと、それによって今でも苦しんでいる人が大勢いることは知っておかないと思った。悪の連鎖は続くな・・・2010/11/21
KathyG
0
恐怖で国民を支配したPinochetの裁判に対して揺れる国民の心中を描いたもの。もちろん大元の責任はPinochetにある。でも拷問や処刑に協力したものがおり、またクーデターで恩恵を受けた層もいる、という事実が状況をより複雑にしている。当時英国にいたため、興味深かったです。米国主導のもう一つの9.11(ひどい奴らだ).チリ落盤事故について著者が、リーダーの家族は社会主義派で弾圧される側だった、故に緊急時に人をまとめることができた、と言っていました。リーダーの家族はコピアポ(!)で処刑されているそうです2010/10/28