台湾事始め―ゆとりのくにのキーワード

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  • サイズ B6判/ページ数 316p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784773630060
  • NDC分類 302.224
  • Cコード C0026

出版社内容情報

「世界でもっとも日本人にやさしい土地」に留学して、暮らして、見て、聞いて、さわって、味わって、恋して、考えた「現代台湾風物誌」。毎年100万人の日本人旅行者を惹きつけ、インターネットの海外地名検索数ランキングでも常に上位を占める台湾。やさしくマイルドな台湾の魅力の数々を120項目に分解し、6つのテーマにまとめて熱く熱く語る。紹介地点へのアクセスに加えて案内地図も収載。「おすすめ」の店や場所を巻末の地図でチェックすれば、あなたただけの旅行スケジュールができあがり!

●プロローグ 台湾のふところ

●「ゆとりのくに」を体感する
 茶 園 ◆茶畑をのぞむ一杯[お 茶]
 凍頂烏龍茶 ◆台湾茶の代表は孤高の香り[お 茶]
 文山包種茶 ◆たいせつに清茶をひとつつみ[お 茶]
 ジャスミンティー ◆フレーバーティーを料理のおともに[お 茶]
 茶芸館 ◆リラクゼーション・サロンとして[お 茶]
 足裏マッサージ ◆全身の調子は足裏一枚から[健 康]
 漢 方 ◆東洋医学の威力[健 康]
 気 功 ◆心・身・息の三位一体[健 康]
 温 泉 ◆クアハウスでぬるみのなかにとけてゆく[健 康]
 冷 房 ◆まるで空気のようなもの[健 康]
 エビ釣り ◆都会の釣り堀、気長な娯楽[健 康]
 ミネラルウォーター ◆炎天下のウワバミ[健 康]
 セルフサービス食堂 ◆お手軽ビュッフェ「自助餐」[シティライフ]
 コンビニ ◆人口比のコンビニ率は世界一[シティライフ]
 誠品書店 ◆全土を席捲するサロン風書店[シティライフ]
 地下街 ◆冷房の小道をそぞろ歩き[シティライフ]
 新光摩天楼 ◆台北を鳥の位置から見わたせば[シティライフ]
 占 い ◆神さま仏さまの答えはいかに!?[神秘世界]
 参 拝 ◆あのルイ・ヴィトンすら客よせに[神秘世界]
 王爺公 ◆厄を引きうけ海へと消えた……[神秘世界]
 媽祖婆 ◆台湾海峡の守護神は海の女神「天后聖母」[神秘世界]
 行天宮 ◆青い衣の癒しの手[神秘世界]
 信 仰 ◆自由な神仏のやどりたまう地[神秘世界]

●「味わいのくに」を満喫する
 夜 市 ◆毎晩が夏祭り[屋台料理]
 担仔麺 ◆台南名物ミニラーメンは、てんびん棒にひっさげて[屋台料理]
 臭豆腐 ◆これを食えたら台湾通と認めよう[屋台料理]
 牛肉麺 ◆日本上陸成功の牛肉きしめん[屋台料理]
 血もの ◆もの好きのおつまみ[屋台料理]
 テイクアウト ◆夕闇を行きかう「おもちかえり」の人々[屋台料理]
 黒タピオカ ◆キュキュッとアジアをふるわすミルクティー[デザート]
 ミルクティー ◆なぜ緑茶にもジュースにも牛乳を[デザート]
 愛玉ゼリー ◆屋台の灯に透ける金色のきら_________________耀_________________________________________________________________________________________________________________________________________________> ~さん(先生・小姐) ◆はにかみがちな恋人たち[気 質]
 やさしさ・おだやかさ ◆おとことおんな[気 質]
 台湾娘 ◆台湾美人は梅の花[気 質]

●「このくにの街」を闊歩する
 台北市 ◆カジュアル、ナチュラル、リラックス[隣り町へ]
 中山北路 ◆木もれ日の「青山通り」のように[隣り町へ]
 西門町 ◆ティーンの町は「原宿」系カジュアル[隣り町へ]
 忠孝敦化 ◆最高の街は休日の「新宿」のように[隣り町へ]
 信 義 ◆副都心に世界一の高層ビル[隣り町へ]
 新交通システム ◆経済成長の果実「捷運」[交 通]
 信号灯 ◆スクーターとカウントダウン信号[交 通]
 中央分離帯 ◆10車線の間にヤシのさざめく余裕[交 通]
 自強号 ◆それぞれの思いを乗せて[交 通]
 新幹線 ◆空間革命、経済ベルト地帯の登場[交 通]
 高 雄 ◆南部の工業都市、国際貿易港[全国へ]
 台 南 ◆前近代史の縮図[全国へ]
 花 蓮 ◆地中に息づく原石の色[全国へ]
 九ふん ◆良質レトロの街なみ[全国へ]
 烏 来 ◆先住民の村は温泉郷[日帰りの旅]
 淡 水 ◆台湾の「ヴェニス」――河ぞいの楽園[日帰りの旅]
 桃 園 ◆山ほどの手荷物を抱えて[日帰りの旅]

●付 録 地図&体験スポットデータ

●エピローグ 台湾の余裕

プロローグ 台湾のふところ

●渡った先で育まれるもの

 ――今夜はどこに行こう。夜市? クアハウス? それとも茶芸館に?

 この三つが夜遊びの選択肢として並列されてしまうのだ。伝統から現代まで、欧米から東洋まで。その両極を包容してしまう。これこそが台湾のふところではないかと思うことがある。

 ところでこの地の屋台や大衆食堂は、別買いの〈店内持ちこみ〉をゆるしてくれるのだが、じつは台湾全体を見まわしてみると、〈島内持ちこみ〉なるものが多いことに気づく。そもそもの先住民族に加え、福建のものも客家も日本も、中国大陸全土、さらに欧米に至るまで――。

 ただし台湾は決して亜流ではない。仮の住みかでもない。よく日本の台湾関連書籍で、「本場は中国大陸で……」という前置きを見かけることがある。当の台湾人も、一種の後ろ楯として漢民族の文明を引き合いに出すことがある。それを否定する気はないけれど、ならば日本文化はどう? ひらがなは――漢人の文字を借用・変形したもの、豆腐は――中国大陸から、お米は――朝鮮半島の渡来人によって、と答えるはめになるだろう。そのすえに東アジアの人類は、すべてどこかの〈原人〉に帰してしまうのかというと、そういうわけでもない。

 渡った先でたしかに育まれ、源から一段、進化したものがある。そのプラスアルファにこそ〈味わい〉が、〈らしさ〉があるのではないだろうか。黒か白かでわりきれるものでない。ダブル、いやトリプル、そうして数かぎりなく積み重ねられたものが、たしかに存在するのだ。

 外来要素の導入→消化→吸収→進化。歴史的に台湾はこのプロセスを運命づけられてきた。そしてまた程度の差こそあれ、日本も韓国もベトナムも、多くのアジア諸国が、こうした葛藤を共有してきたのではないだろうか。前近代には中華に、近代以降は欧米に対して――。そんな象徴としても、台湾は貴重なケースではないかと思う。

●のびやかな台湾文化

 あるときCDショップにて、思わず購入したのは、茶芸ヒーリング音楽なるものだった。烏龍茶のかぐわしさ、あの形なきものが、姿を変えて旋律に。そんな音色に耳を傾けるうちに、けばだちがちな心が、まるで茶の精が舞い降りるように、いつのまにかしっとりとおさまってゆく。点茶らしき水音の背景には、伝統楽器とシンセサイザーのコラボレーションが、神秘的な雰囲気をかもしだしていた。

 いったい伝統文化というものは、都市生活のなかで、どのような進化をとげてゆくのだろう。さらには、様々な文化をバックに、どこがどのように台湾的なのか。本書の前身(完売御礼となった『新しい台湾いろいろ事始め』)を編みはじめたころから、捜しもとめてきた。現代的なライフスタイルを枠組みに、いくらでも民俗風のアレンジが秘められているはずだ。それと気づかれないままに、街なかに埋もれたままでいるのは、もったいない。

 原色が亜熱帯にほどよくとけて、日本人に優しいアジア。品種改良の重ねられた凍頂烏龍茶をカフェで味わうひととき。花茶もこの地ではハイビスカスティー、しかもグラス入りのアイスで。または数千年来の秘伝が蘇る足裏マッサージを清潔なサロンにて。それとも民間信仰の神秘世界を占いストリートで体験してみようか。まるでギャラリーに色とりどりの現代美術があふれるように、街のかしこにのびやかな台湾文化が花開いている。

 漢民族の文化ばかりではない。先住民音楽にかいま見られるようなエスニック、または「日本好き族」や「日本懐古」の人々の胸のなかの日本。――世界各地の要素を吸収してしまう柔軟性は、合弁上手のビジネス術として活かされるばかりでない。文化のリミックス、再創造として、次々とバリエーション豊かな文化を生み出しているようだ。

 そんな悠々たる〈くに〉。公園のような中央分離帯には公共芸術がたたずみ、街にはコンビニが林立する。セルフサービス食堂には各種メニューがあふれる。参拝熱心であるような、心のゆとりも忘れない。その生活水準にしろ外貨保有高にしろ、アジアNIESの優等生として、ゆとりをたたえている。経済力を背景にするばかりでない、亜熱帯特有のやさしさ、おだやかさ。まるでぬるめのクアハウス、あるいは黒タピオカ・ミルクティーのように、なごみの丸みを帯びた人びと。マイペースの和気あいあい。何よりも世界一、親日というだけあり、年間、一〇〇万人以上の台湾人が、日本を訪れてくれているという。

●言葉を越えた近しさ、親しみ

 台湾を旅行する日本人もまた、その数一〇〇万人を超えた。この地のあたたかさを、どこかで覚えているかたは歴代、非常な数にのぼるのではないだろうか。旅先から持ちかえる、いい想い出はひとつのパワーですらあると、私は信じている。

 さらに緊密な経済関係も見逃せない。OEM(相手方ブランド)生産により実質は台湾製という日本製品も少なくない。万が一台湾海峡にことあれば、日本も無関係ではいられない。台湾と日本はもはや、相互補完の関係にあるといっても言いすぎではないだろう。いや、解説よりも何よりも、台湾の地を訪れてみれば、実感することだろう。言葉を超えた近しさを、親しみを――。

 本書に集めたキーワード一一九は、台湾という文化多面体の一面だ。数々の視点のなかで、あなたのアンテナに響くものは? まずは一二ページの目次から開いていただければ、と思う。気になる項目をチェック、好きなキーワードからご覧いただくにつれ、関連する様々なキーワードにも出会うはずだ。必要に応じてのあとに続くページを参照するもよし、後から間のキーワードを埋めるもよし。やがてはパッチワークのように、台湾像が編みだされゆくはずだ。さらにもしも渡航をひかえているのであれば、各項目末にあるの体験場所から、そのつど巻末(P301~P312)のアクセス一覧へと飛び、欄にチェック印を入れておけば、読み終わるころには、あなただけのガイドブック、携行型の「旅の事典」が完成していることだろう。

 こころはひとあし早く、亜熱帯のなごみの島、台湾へ。ゆとりとみどり、美と味わいの〈くに〉へ。 あなたならではの台湾体験ができますように。

 「一路順風!」(行ってらっしゃい)

どこからでも読める旅行携行型事典。やさしくマイルドなアジア「台湾」の魅力と底力を、女性の感性で120項目6テーマに分けて紹介。

内容説明

「世界でもっとも日本人にやさしい土地」に留学して、暮らして、見て、聞いて、さわって、味わって、恋して、考えた「現代台湾風物誌」。毎年100万人の日本人旅行者を惹きつけ、インターネットの海外地名検索数ランキングでも常に上位を占める台湾。やさしくマイルドな台湾の魅力の数々を120項目に分解し、6つのテーマにまとめて熱く熱く語る。紹介地点へのアクセスに加えて案内地図も収載。「おすすめ」の店や場所を巻末の地図でチェックすれば、あなただけの旅行スケジュールができあがり。

目次

「ゆとりのくに」を体感する
「味わいのくに」を満喫する
「みどりのくに」を散策する
「美のくに」を鑑賞する
「このくにのひと」に出会う
「このくにの街」を闊歩する

著者等紹介

亜洲奈みづほ[アスナミズホ]
東京大学経済学部経済学科卒。東京大学社会情報研究所に学ぶ。朝日新聞・東亜日報共催戦後50周年記念懸賞論文「日韓交流・未来への提言」で最優秀賞を受賞(1995年)。内閣府主催「第21回東南アジア青年の船」日本代表青年。『新しい台湾 いろいろ事始め』(凱風社)などの作家活動のほかテレビ・ラジオ等に出演。「月刊モダネシア」編集長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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