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ヌサトゥンガラ島々紀行―バリ発チモール行き

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  • サイズ B6判/ページ数 286p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784773630046
  • NDC分類 292.46
  • Cコード C0026

出版社内容情報

 グローバリズムの辺境に生きる人々に惹かれた著者は、「いいかげんこのうえない」交通に悩まされながら、ウォーレス線の彼方を何度も島づたいに巡った。そこでは三大世界宗教をそれぞれ信じる人々が多様な生活を送っている。首狩り、コモドドラゴン、巨石信仰や精霊信仰、物々交換の定期市場、小さなフローレス原人、銛を片手のクジラ狩り――。島々を特徴づける多様な暮らしを見ると、改めて「近代の矛盾」がはっきりと見えてくる。

プロローグ

1 バリ島 【楽園、もうひとつの素顔】
虎、ここに終わる/ガイコクでは……/スペシャルな場所/空を飛べなかったマグロたち/仲良し町内会/命の値段/ロンボク行きのバスチケット/敗者の歴史/熱帯魚も空を飛ぶ/少年時代

2 ロンボク島 【ウォーレス線を越えて】
ウォーレスの大地/州都マタラム/壊れもの/汝の隣人/人生最大の儀式/「衣」のスローライフ/略奪婚/牛の角/イスラム教もどき/ヤシの話/幻の白オウム/最強の定食/植民地時代の遺産

3 スンバワ島 【夢はメッカか幻か】
親子スリ/終着駅ビマ/ビンタン・ゼロ/庶民の娯楽/村一番の人気者/ギネス記録/辺境の高級リゾート/ゴールドラッシュ/ロームシャ/日本軍の財宝

4 コモド島 【ドラゴンのくに】
ドラゴンへの道/ドラゴンの真実/ドラゴン調査隊/ドラゴン狂想曲/ドラゴンの村

5 フローレス島 【不思議の宿るところ】
バジャウ人の港/旅のリスク/謎のフローレス原人/小人と小象/巨石信仰/火山の恵み/スカルノ幽閉の地/パソコン・ショップ/若者の夢/観光の目玉/くせ者運転手/ポルトガル人/つわものどもが夢の跡/ララントゥカの復

 バリ島の東に浮かぶロンボク島から、ダラダラッと続く多島海の島々、そこがヌサトゥンガラだ。舌を噛みそうな名前だが、日本語に翻訳すればあっけないほど単純、「東南の島々」という意味である。

 ヌサトゥンガラを訪れる日本人観光客は、ほとんどいない。乗客が少ないと勝手にフライトをキャンセルしてしまう、わがままな飛行機。りっぱなホテルもほとんどない。衛生状態も決してよくないから、腹をこわす可能性もある。一泊三日の旅をして、その足で仕事場に直行するようなタイプの日本人観光客には、いちばん不向きな場所なのかもしれない。

 それにヌサトゥンガラには、カンボジアのアンコール・ワットや、ネパールから眺める雄大なヒマラヤの風景のように、「ごちゃごちゃ言わずにまあ見てみなよ」と言えるような、インパクトのある観光スポットがあるわけでもない。

 それでも私がヌサトゥンガラに惹かれるのは、そこに広がる多様な世界の魅力だ。

 東西に細長いヌサトゥンガラ。といっても全長は、わずか一二〇〇キロ足らず。日本の本州を縦断するより短い距離だ。しかし旅をしているうちに、いくつもの国を渡り歩いているような、不思議な感覚に襲われる。ガラは、戸惑いの連続だ。でも、雑多な価値観を持った人間が、それなりの居場所を持って暮らしている様に触れているうち、次第に肩の力が抜けてゆくのを感じる。それは、人がありのままに受け入れられているという、日本ではめったに体験できない、当たり前の現実がもたらす開放感なのかもしれない。

 人前で感情をあらわにしないことが美徳とされる日本人と比べ、彼らはよく泣き、よく笑い、よく怒る。ヌサトゥンガラの人々は、良きにつけ悪しきにつけ、正直に自分をぶつけてくる。もちろん、ヌサトゥンガラは地上の楽園ではないし、そこに生きる人々も、清く正しく美しい人ばかりではない。むしろその逆だったりすることもある。それでも彼らに愛着を感じるのは、そこに日々を必死に生きようとする生身の人間の姿があるからだ。

 三〇万人の命を奪ったスマトラ島沖地震の記憶は生々しいが、幸いにも、二〇世紀にアジア全体を包みこんだ「近代化」という名の大津波は、まだヌサトゥンガラを完全に飲みこんではいない。それは、過去も現在もこの地が中心から遠く離れた「辺境の地」だったからに違いない。

 急速に均質化してゆく世界から逃れるように、いにしえのアジアの営み

 これが現代か、と目を疑うほど異色な暮らしが次々にレポートされます。著者は映画助監督からテレビのディレクターに転身し、マイノリティーや教育をテーマに番組を作ってきました。

 「素朴な」暮らしを続けてきた庶民に対するテレビの破壊力は凄まじい。こう実感する著者だからこそ、愛情あふれる眼差しで滅びゆく「いにしえのアジア」をすくいとることができたのでしょう。

内容説明

コモドドラゴン、フローレス原人、奇祭パッソーラ、ララントゥカの復活祭、銛でクジラ獲り…。ウォーレシアにいにしえのアジアを模索する。

目次

1 バリ島―楽園、もうひとつの素顔
2 ロンボク島―ウォーレス線を越えて
3 スンバワ島―夢はメッカか幻か
4 コモド島―ドラゴンのくに
5 フローレス島―不思議の宿るところ
6 スンバ島―ラジャのため息
7 チモール島―白檀の罪
8 アロール諸島―貨幣に刻む物語
9 ソロール諸島―首狩りとクジラ獲り

著者等紹介

瀬川正仁[セガワマサヒト]
映像ジャーナリスト。1978年、早稲田大学第一文学部卒業。ジャン・リュック・ゴダールの作品に触発を受け、映画の世界に入る。80年代後半より映像作家としてアジア文化、マイノリティ、教育問題などを中心に、ドキュメンタリーや報道番組を手がける。日本映画監督協会会員。日活芸術学院講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ジュースの素

6
ヌサトゥンガラ諸島は ほとんど知られていないが、バリ島からまっすぐ東に幾つもの島を連ねるインドネシア領だ。瀬川氏が2か月をかけて西から順に訪ね歩いた紀行。バリが観光で大成功した裏に、あとの島々はパッとしない。島伝統の暮らしやイカット、コモドドラゴンなど特徴があるのに、島を相互に行き交う連絡船がほとんど機能していなかったり、宗教がバラバラで民族の疎通が難しかったり、オランダやポルトガルの植民地時代に手痛い扱いも受けた。インドネシア人のゆるさが良くも悪くもこれらの島々の運営に影響しているんだなぁと痛感。2016/04/07

takao

3
ふむ2024/01/22

カネコ

0
2011/04/01

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