内容説明
「すべての精神現象を刺激‐反応の枠組みでとる」行動療法の大家・山上敏子が、下山晴彦研究室を領域に、行動療法の基礎から応用までを「臨床の楽しさ」とともに語った東大講義の記録。
目次
講義1 刺激‐反応の枠で行動を具体的にとる
講義2 行動療法は、ダイナミックな方法である
講義3 治療の実際1―引きこもり男性Aさん
講義4 理論も技法も自在に使う
講義5 問題に沿って治療を進める
講義6 治療の実際2―強迫症状が主訴の発達の障害をもつ男性Bさん
講義7 コミュニティで行動療法を活用する
講義8 治療の実際3―多職種が協働して援助したCさん
講義9 参加者からの質問に答えて
講義10 臨床心理学を学ぶ人に向けて
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
riviere(りびえーる)
14
行動療法は効果研究からも認められている方法なのは知っていたけれど、「相手を思いのままに動かす法」のようでもあり、今一つ好きになれなかった。今回この本を読んで、臨床現場の中でどのように使っていけばよいのかとてもよくわかった。学生対象の講義を起こした本であるため、行動療法だけでなく臨床での基本もいっしょに織り込まれていることが良かったのだろう。学生との素直な質疑も魅力的。「具体的に見る」「苦痛を軽くしてあげる」2015/07/21
anchic
5
行動療法と謳っているが、中身は心理臨床家として必須の技術や心構えを説いている良書。特に「行動療法は病理理論等はなく、単に技術の一つ」というのは納得。確かにCBTを学び、実際介入効果を挙げていても、実感として行動療法が身に付いているという感覚がないことに疑問を抱いていたが、それが技術であるなら当然のことだと思う。例えば語学は会話の技術にすぎないので、どんなに英語に流暢な人でももう十分だとして語学勉強をやめないのと似たものだと言える。某学会で見かけた『ただならぬオバハン』は本当にただならぬ存在だった。2013/09/22
めいぷる
5
臨床心理士という職業は技術職であり、そのための基本の技術の習得が重要であるということを痛感させた一冊。また、セラピストがクライエントを強くイメージ、予想を行う「対象理解」が十分になされていないことには行動療法が成立しないということをこの本を通して作者の強い主張だと感じた。一度ではなく何回も読みたいと思える一冊だった。2012/09/01
きくりん
4
クライエントの困っていることは何か、どうすれば少しでも良くなるのか。しっかりした技術を身につけることが大事だと説く。行動療法や技術というと冷たい印象を持つかもしれないが、この本を読むと人に対する温かな視線や生活を大切にする姿勢を感じる。行動療法とは徹底的にクライエントのニーズに沿って、あらゆる想像力を駆使してクライエントの側に立ち、なおかつ全体を見てさまざまなリソースを使い、悪循環から抜け出す道筋を作る。大変頭を使う細やかな作業。臨床家として大切なことがちりばめられている。2014/08/14
anchic
3
今週末に迫った公認心理師試験受験のために再読。行動療法を実際の臨床場面でどう取り扱うのかといったことをわかりやすく解説している。駆け出しの頃に犯しやすい過ちや一般の方やクライエントに持たれやすい誤解に対する対処法についても書かれていてとてもためになる内容だと感じる。といっても、著者のように自在に臨床に活かすには並々ならぬ努力が必要で、言うは易く行うは難しという側面もあることは否めないと思う。心理職を技術職とみなしているとおり、やはりある程度の才能がないとこの仕事は長くやっていけないと思う。2021/09/17