出版社内容情報
アートが家族関係を対象とした心理面接に取り入れられ,家族療法と統合されたとき,この技法が極めて有効であることを示す。
内容説明
わが国においてアートセラピーは、絵画解釈に興味の中心が置かれがちだが、人間の思いを変化させていく道具としてのアートは、とりわけそれが家族関係を対象とした心理面接に取り入れられて家族療法と統合されたとき、極めて強力な力を発揮する。アート作品を作る過程では、それが創造と破壊の連鎖であることから変化は必然的に起こり、家族関係の新しい形も抵抗をもたれることなくアート作品の中に自然と疑似体験される。その結果症状や問題となっていたことが問題ではなくなったり、今後の変化が現実に先行して表現されるといったアート自体の特徴がもたらすダイナミックな過程を、本書に収められたさまざまな事例と数多くのアート作品が如実に示している。アートを使うことによって、言語だけでは到底不可能な対象にアプローチでき、安全で効率的かつセラピストに力を与えてくれるファミリー・アートセラピーの世界を、理論面から検討するとともに実践の多様なあり方を具体的に示した本書は、心理臨床の現場に新しい可能性を開いてくれるだろう。
目次
第1部 理論と実践の統合(家族が描く家族の物語:家族の現実を見るレンズとしてのアートセラピー;クライエントが症状の非・解決を選択することを通じて回復を援助する;言語化:アートセラピー治療における言語的要素に関する考察;機能不全家族への解決としての統合失調症:治療に構造的アプローチを用いて;逆説を描いてくださいますか?…:変化にシステミック・アプローチを利用したファミリー・アートサイコセラピー;個人アートセラピーの戦略的家族システム論的アプローチ;夫婦療法/アートセラピー:戦略的介入と原家族への対応)
第2部 特定の問題の治療(多家族グループ・アートセラピー:障害者を持つ家族に対する治療;青年期とファミリー・アートセラピー:「青年期の家族」をファミリー・アートセラピーで治療する;ドメスティック・バイオレンスの経験を持つ家族に対するアートセラピー;外来におけるアートセラピーの利点)
著者等紹介
鈴木恵[スズキメグミ]
臨床心理士、情報保健福祉士、修士(ファミリー・アートセラピー学)。1982年青山学院大学文学部教育学科卒業。日本大学精神神経学教室に助手として所属、日大板橋病院、駿河台日大病院にて指導を受けるかたわら千葉県総合教育センター、池田病院、新所沢清和病院等で臨床心理士として勤務。1988年米国ロヨラ・メリーマウント大学大学院家族療法学科に留学、ファミリー・アートセラピー学修士課程修了。1990年同大学院卒業。帰国後、新所沢清和病院に勤務。1992年より埼玉県立精神医療センター及び精神保健福祉センターに勤務
菊池安希子[キクチアキコ]
臨床心理士、精神保健福祉士、博士(保健学)。1990年東京大学医学部保健学科卒業。1992年東京大学大学院医学系研究科保健学専攻修士課程修了。明治学院大学非常勤講師、国立精神・神経センター精神保健研究所薬物依存研究部流動研究員、東京大学保健センター助手などを経て、2004年より国立精神・神経センター精神保健研究所司法精神医学研究部室長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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