内容説明
全世界を震憾させた未曾有の大事故をとおして、精神と科学の関わりを鋭く問う、衝撃の問題作！原発事故のニュースを聞きながら主人公は、その日、脳腫瘍の手術を受けている弟を気遣いながら語りかける―現代のユートピアは、必然的に怪物を生み出すものなのでしょうか…？近代科学の恩恵を享受する一方で、その恐怖に晒される状況を、女性作家ならではの視点で冷徹に描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Nobuko Hashimoto
38
輪読ゼミで学生と読んだ。初老の女性作家のある一日の独白というか内なる声の形をとった小説。チェルノブイリ原発事故と弟の脳腫瘍の手術という、人類規模の災害と大切な人の生命の危機に際して、人間とは、科学とはと思考を掘り下げながら、日々の料理や買い出しや郵便物の処理をこなしていく。その遊離しているような精神状態が私には経験的によくわかったのだが、若い学生諸君にはかなりとらえづらかった模様。詳しくはブログに。https://chekosan.exblog.jp/29843041/ もっと読まれていい本。復刊求む。2019/12/17
Quijimna
3
世界がどんな深刻な状況でも、人びとの日常はこうして淡々と進む。その日常のなかに普遍と真理を見出すのが文学者の仕事のように思う。 ★★★★☆2013/09/05
