内容説明
実証的研究の成果。中世文学の諸分野にわたって作品の「読み」を問いつづけてきた筆者初の論文集。長らく未詳とされてきた能の典拠を明らかにし、主題上の位置づけを試みた「世阿弥本『弱法師』と阿内律説話」など十五篇を収録する。
目次
伏見院歌出典考
花園院と「誡太子書」の世界
誡太子書箋釈
二条良基の連歌三題
世阿弥本『弱法師』と阿那律説話
能『石橋』と『古今集三流抄』
〓芋詩叢―五山文学管窺
一条兼良『藤河の記』の漢籍利用―鳳のあぶりもの、麟のほしじ
三条西実隆『再昌草』と漢籍
『衆妙集』のなかの『論語』断章
蕪村『俳仙群会図』賛をめぐって―「文こゝにあらありがたや」考
『大原御幸』と小書「寂光院」
柏木如亭「即事」詩考
この世に文学は必要か
雪を聴く
著者等紹介
中村健史[ナカムラタケシ]
1980年、高知県生まれ。京都大学大学院博士後期課程指導認定退学。博士(文学)。専門は京極派和歌。2016年より神戸学院大学人文学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のりたま
2
中村氏の研究に対する姿勢は「実証的」に尽きる。国文学の研究者はコツコツと用例を集め、作者の周辺を調べ倒す、堅実な研究方法をとる傾向があるように思う。この実証主義が本著の縦糸だとすれば、緯糸は文学に対する愛だ。「花園院と『誡太子書』の世界」の最後の1文に「ここにはたしかに、文学と呼ぶべき何かがある」とあるが、他の論文にも氏の文学に対する気持ちが滲み出ている。「この世に文学は必要か」はストレートにこのテーマで書かれていて、これからの文学研究者はこういうことについて考え発信していかなければならないと思った次第。2021/04/19