内容説明
日本の植民地支配と戦後の外国人政策、朝鮮半島の南北分断のはざまに置かれ、無「国籍」を強いられた世界に3万人しかいない人びと…。
目次
序文 なぜ朝鮮籍なのか
第1章 朝鮮籍在日朝鮮人の「国籍」とは?―法学の観点から
第2章 朝鮮籍の制度的存続と処遇問題―日本政府による韓国の限定承認と在日朝鮮人問題への適用
第3章 日本政府による「朝鮮」籍コリアンの排除―2000年代のバックラッシュのなかで
第4章 韓国入国問題を通して見る朝鮮籍者の政治的多様性の看過
第5章 済州島、三河島、そして朝鮮籍
第6章 なぜ無国籍の「朝鮮」籍を生きるのか?
第7章 グローバル時代の朝鮮籍―インタビューからみるアイデンティティ諸相
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
崩紫サロメ
17
朝鮮籍とは旧植民地出身者およびその子孫としての在日コリアンのうち韓国国籍を取得していない人々の出身地域を示す「記号」であり(p.40)、事実上の無国籍状態の人々を指す(p.72)。朝鮮籍の人々は2020年時点で3万人弱と「マイノリティの中のマイノリティ」となっている。何故韓国や日本ではなく朝鮮籍という生き方を選ぶのか、様々なケースが紹介されている。その中で、韓国も北朝鮮も「選ばない」という積極的に無国籍であることに意義を見出す丁章の論(第6章)には国籍というもの自体を考えさせられる。2021/05/06
ケイケイ
2
★★★★ 正直、自分はなんにも知らなかった、ことを教えてくれる一冊。 世界大戦後、日本に居住していた朝鮮の人たちの祖国への帰国政策が、北と南の政治バランスで実現していかなくなる、などという歴史背景から国籍を持たない人々におけるトランスナショナルを事実に踏まえて丁寧に記述していて資料としてみ貴重。 現代を生きる上で必要な精神性に、ささやかに最後に触れてくれている。2021/02/07
ぬるま湯
0
『スープとイデオロギー』を観て、在日コリアンについてもっと学ばなければと思い、帰りに買い求めました。朝鮮半島の南が善で北が悪と考えてきたけれど、南の政府を支持できず、北に希望を見出すに至った人もいることとその背景を知り、北に想いを寄せる人の考えをもっと知りたいと思ったからです。本書は、北に想いを寄せる人=朝鮮籍を連想した私の無知さ、短絡さを最初から正してくれる本でした。朝鮮籍は北朝鮮籍だろうと勘違いしている、少し前の私みたいに人に読んでほしい。在日コリアンの歴史は日本史の一部。学校でも教えてほしい。
Hisashi Tokunaga
0
朝鮮籍を深堀りしながら国籍、国家、民族、祖国、家族、親戚、祖先、住民、世帯、難民、・・・・・移動、定住・・・無数に外延が広がる。「居場所」なんて軽々に探すものではないようだ。2021/05/28