世界の教科書シリーズ
インドネシアの歴史―インドネシア高校歴史教科書

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  • サイズ A5判/ページ数 405p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784750328423
  • NDC分類 224
  • Cコード C0322

出版社内容情報

1994年カリキュラム・1999年教育指導要領補遺に準拠した高校用歴史教科書全3巻を底本とし、先史時代から現代まで、世界史を除くインドネシア史関連の記述に限定して翻訳した。ふだん馴染みの薄いインドネシア史の通史として最適な入門書でもある。

 序文
 凡例

第1章 インドネシアの先史時代
 A. 出土品に基づく先史時代区分
 B. インドネシアの化石人類
 C. インドネシア人の起源
第2章 インドネシアにおけるヒンドゥー教・仏教の影響
 A. インドネシアにおけるヒンドゥー教・仏教文化の伝来と展開
 B. ヒンドゥー教・仏教文化とインドネシア文化の融合
 C. インドネシアにおけるヒンドゥー教・仏教王国の展開
第3章 インドネシアにおけるイスラムの発展
 A. イスラム教とイスラム文化の伝来と発展
 B. イスラム文化によるインドネシア文化の変容現象
 C. インドネシアにおけるイスラム王国
 D. イスラム王国時代の文化遺産の価値観
第4章 インドネシアにおけるヨーロッパ人支配の拡大
 A. インドネシアにおける西洋の植民地主義と帝国主義の展開
 B. 外国の支配に対するインドネシア民族の抵抗
第5章 インドネシア民族運動の萌芽と発展
 A. インドネシア・ナショナリズム出現の背景
 B. インドネシア民族運動のイデオロギーと組織の発展
 C. 政治宣言としてのインドネシア協会
 D. 民族の統一と団結の理念および運動組織の活動
第6章 日本占領とインドネシア独立準備
 A. 日本がインドネシアを支配した背景
 B. インドネシアにおける日本占領時代
 C. インドネシア独立への歩み
第7章 インドネシア独立宣言と主権確立への努力
 A. 独立宣言前後の重要な出来事
 B. 国の諸機関の設立
 C. 独立初期のインドネシア国民の状態
 D. 民族闘争およびインドネシア共和国主権の承認
 E. 単一インドネシア共和国復帰への闘い
 F. 独立戦争時代の闘争の価値観
第8章 独立を完成させるための努力
 A. 前置き
 B. 経済の国有化
 C. 1955年総選挙
 D. 国内治安対策
 E. 国際協力と民族間団結
 F. 1959年7月5日大統領布告と「指導される民主主義」の実践
 G. 西イリアン解放闘争
 H. 9月30日運動とその鎮圧
 I. 新秩序体制
 J. 政治・経済・社会危機と改革
 K. 27番目の州、東ティモール
 L. 独立完成期のインドネシア民族闘争の価値観と日常生活におけるその活用

 訳注
 監訳者あとがき


監訳者あとがき

 本書の翻訳は去る2002年にはすでに終わっていた。しかし、出版社との交渉に手間どっている間にインドネシア国民教育省から2004年新カリキュラムが発表されるという事態が発生した。出版社から、翻訳出版は2004年カリキュラムに基づいた新版の完成を待つようにとの要請もあり、2005年秋の全3巻の刊行を待ち、新版の翻訳に取り掛かった。ところが、2006年9月になり突如「新カリキュラムが出るので2004年カリキュラム準拠の歴史教科書の翻訳は許可しない」とのショッキングな連絡が出版社から舞い込んだのである。
 2004年度カリキュラムは、特別に指定を受けた学校では、2002/2003年度からすでに試験的に実施されていたが、小冊子とファイルの形で国民教育省から正式に示されたのは2003年10月のことであった。それが、2006年9月には廃止が決まり、新たに2006年新カリキュラムへの移行が発表されたのである。
 このような事態となった背景はどのようなものであったのであろうか。これについて2005年6月から2006年10月までのメディアの報道(電子版)をまとめると次のようになる。
 2005年6月22日付Tempointeraktifには、「インドネシア共産党(PKI)が教科書からなくなっている」との見出しの記事が載った。内容は、「2004年カリキュラムの歴史教科書は、1948年のマディウンでの共産党の反乱、さらにジャカルタの9月30日運動事件からPKIの語を削除してしまっているとユスフ・ハシム〔ナフダトゥル・ウラマ(NU)の有力者〕が述べている。また、ファドゥリ・ゾン〔イスラム知識人で政策調査研究所長〕によれば、2004年カリキュラムにはPKIがインドネシアにおける反乱を引き起こしたことが明記されていない。彼はこのことを国会の第10委員会〔文教関係担当〕の委員であるアンワル・アリフィンに伝えた。この件でアリフィンは、国民教育省のカリキュラムセンター長のバンバンと連絡をとった」(要旨)。
 2日後の6月24日のSuara Pembaruan Onlineには次のような記事が載った。
 「2005年6月23日、国民教育相、国民福祉調整相、観光文化相の三者会談が行われ、2005/2006年度から歴史科目に限り、新カリキュラムが決定するまでは、1994年カリキュラムを再び使用する、また歴史基準の決定は、2005年の政令第19号に基づき、全国教育基準機構(Badan Standar Nasional Pendidikan)が行うことが話し合われた。2004年カリキュラムの歴史科目で問題となったのは、『インドネシア共産党(PKI)の反乱』がカリキュラムに明記されていないことである」(要旨)。
 そして、6月28日のMedia Indonesia紙には次のような記事が掲載された。
 「国会の第10委員会と国民教育相のバンバン・スディビヨは、PKIの反乱に関し完全な記述をしていない2004年カリキュラム歴史教科書にかかわる問題を解決することで意見の一致をみた。政府に対しては早急に歴史科目の2004年カリキュラムの使用を中止し、その教科書を学校で使用しないようにとの要請がなされた。これにより使用されるのは1994年カリキュラムに基づく歴史教科書となる。
 国民教育省カリキュラムセンター長のバンバンは、『問題の歴史科目の2004年カリキュラムは、前政権時代に作成されたものであり、この問題の裏に誰がおり、どうしてこのようになったかを細心の注意をはらって調べる』と述べ、『2004年カリキュラムはまだ試行段階であり、歴史科目を含めてまだ公式に施行されているわけではない。国民教育省は教科書を回収する権限はないが、歴史科目の2004年カリキュラムは再検討することになる』と語った」(要旨)。
 約半年後の2005年12月1日のTempointeraktifは、「1948年のマディウンにおけるインドネシア共産党の反乱、ならびに1965年9月30日運動が再び歴史カリキュラムに取り入れられる」と伝えている。記事は、「歴史科目改善委員会の書記官は談話のなかで『見直し前、歴史科目のカリキュラムはマディウン事件を取り入れていなかった。9月30日事件にしてもPKIの関与を述べていなかった。ダルル・イスラム/インドネシア・イスラム軍(DI/TII)とPRRI-Permestaの反乱が入っているのにPKIの反乱が入っていないのは問題、ということで抗議が起こった』と述べている」(要旨)。
 2006年3月には各メディアにより2006年新カリキュラムが導入されるとの報道がなされた。また、報道によれば、カリキュラムの編纂はこれまで政府が行ってきたが、新カリキュラムは独立した機関である、全国教育基準機構が編纂し、それを国民教育省が承認するという方法がとられるという。
 そして、2006年10月2日になると突然、「検察庁が2004年カリキュラムに準拠した小学校から高校までの歴史教科書を取り調べ中である」との報道がなされた。
 これに関し、Suara Merdeka Onlineには次のような記事が載った。「最高検情報局長のモフタル・アリフィンによれば、歴史教科書の取り調べは現在、連絡協議会 チームによって行われている。このチームのメンバーは検察、国家警察、国民教育省、国家情報局の関係者から構成されている。このチームは国民教育省、出版社や歴史家たちに説明を求めており、なぜPKIの語が明記されていなかったのかを調べている。モフタルは、もし『PKI』不記述が故意でないならば、問題は長引かないであろうが、それが意図的であった場合は、その土台となった議論を知る必要が出てくると述べている」(要旨)。
 そして2007年3月5日、検事総長から2004年カリキュラムの歴史教科書回収の決定書が出され、4月頃より各地で10社にものぼる出版社による自主回収、書店、各学校での回収作業が開始された。そして、7月には回収した教科書の焼却も行われている。
 このような背景の下、2004年カリキュラムに準拠した歴史教科書の翻訳出版は断念せざるをえなくなった。しかし、2000年に出版されたものはすでに翻訳が終わっていることや、2006年カリキュラム準拠の全3巻がいつ出そろうのか不明であることから、「1994年カリキュラム・1999年教育指導要領補遺」に準拠した本書を刊行することとなったしだいである。読者の皆様方のご理解をお願いしたい。

  2008年6月   石井 和子

目次

第1章 インドネシアの先史時代
第2章 インドネシアにおけるヒンドゥー教・仏教の影響
第3章 インドネシアにおけるイスラムの発展
第4章 インドネシアにおけるヨーロッパ人支配の拡大
第5章 インドネシア民族運動の萌芽と発展
第6章 日本占領とインドネシア独立準備
第7章 インドネシア独立宣言と主権確立への努力
第8章 独立を完成させるための努力

著者等紹介

石井和子[イシイカズコ]
1941年、東京都生まれ。元東京外国語大学教授。ジャワ学専攻

桾沢英雄[グミサワヒデオ]
1953年、東京都生まれ。東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了。現在、上智大学・東京外国語大学非常勤講師。東南アジア学会会員、アジア政経学会会員。インドネシア近現代政治思想史専攻

菅原由美[スガハラユミ]
1969年、東京都生まれ。現在、天理大学国際文化学部アジア学科講師。インドネシア近代史専攻

田中正臣[タナカマサオミ]
1972年、神奈川県生まれ。国立インドネシア大学大学院文学研究科修士課程修了。現在、在日インドネシア共和国大使館で通訳・翻訳専門家として勤務

山本肇[ヤマモトハジメ]
1938年、中国東北部(旧満州)生まれ。東京大学農学部卒業、住友商事勤務を経て、東京外国語大学大学院地域文化研究科博士前期課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ユビヲクワエルナマケモノ

1
インドネシアの高校で使用されている教科書。先史時代からワヒド大統領就任までの流れを一通り知ることができる。独立の達成過程と建国の理念が諸所で熱く語られている点が特徴。全8章のうち、半分が独立運動と現代史に割かれている。自国の歴史が現代にいかに繋がっているかを示すことにより、インドネシア憲法に定める理念を高校生に理解させることに重きを置いていることが分かる。 地図が無いのが難点。世界史資料集等で補いながら読むしかない。2020/03/25

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