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現代中国を知るための50章

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  • サイズ B6判/ページ数 277p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784750328225
  • NDC分類 302.22
  • Cコード C0336

出版社内容情報

世界においてますます存在感を強めている現代中国に対し、われわれは今後いかに向き合っていけばよいのか。中国の現在の姿を、豊富な資料・データをもとに紹介しながら、今後の中国情勢の注目すべき要素、その動向を捉える視点を提供する。

 まえがき

I 大国化の中の政治

 第1章 責任大国とナショナリズム――漂流する国際協調路線
 第2章 「和諧社会」の建設――調和とバランスを求めて
 第3章 胡錦濤政権から 第五世代へ――ニューリーダー習近平・李克強の登場
 第4章 一党独裁体制の仕組み――権力集中と「人治」が生む弊害
 第5章 政治体制改革の流れ――国民の価値観多様化にどう応えるか
 第6章 膨張する人民解放軍――党の軍隊か国家の軍隊か
 第7章 基層組織の変化――自治組織としての村民委員会と「社区」居民委員会の設置
 第8章 建国以来の政治――長い受難の時代と改革開放三〇年
 第9章 少数民族問題――混迷続くチベットと新疆ウイグル
 第10章 改善遅れる人権――中国を悩ます国際社会との摩擦のタネ
 第11章 まん延する腐敗・汚職――中国共産党の永遠の悩み?

II 経済と社会の動き
 第12章 二〇〇〇年代の超高度成長――変わらぬ過剰投資体質
 第13章 世界経済へのインパクト――貿易摩擦に苦慮する「世界の工場」
 第14章 「民生の改善」を求める声――改革の負の側面を見直す改革に
 第15章 発展方式の転換と産業構造調整――「科学的発展観」に基づく経済・社会建設
 第16章 民営企業の台頭――高まる経済的な重要性
 第17章 外資政策の転換――国際的な分業体制再編の潮流
 第18章 世界一の外貨準備と海外投資――迫られる過剰流動性対策
 第19章 人民元の上昇と自由化――慎重に進められる為替制度改革
 第20章 拡大する証券市場と中国株――目処が立った非流通株問題
 第21章 対外開放と地域振興――発展のけん引役
 第22章 新社会階層の台頭――体制変革の推進圧力となるか
 第23章 いつまで続く住宅ブーム――“住宅奴隷”も出現
 第24章 マイカー時代の到来――市場の急拡大と値下げ圧力
 第25章 IT社会――急速に進む情報化
 第26章 中国のメディア事情――改革と管理強化のはざまで
 第27章 メディアと世論――大衆化の中で形成される世論
 第28章 「80後」が変える社会――主役に躍り出る新人類

III 直面する課題の数々
 第29章 拡大する格差――偏在する富の中での共存
 第30章 日中経済関係――双方向での交流に
 第31章 三農問題――都市と農村を隔てる壁
 第32章 耕地の減少――迫られる土地の有効利用
 第33章 雇用問題――雇用の充足と賃上げの流れ
 第34章 人口問題――軟着陸模索する一人っ子政策
 第35章 エネルギー問題――安全保障をも脅かす
 第36章 環境問題――経済成長の足かせ
 第37章 省エネ・水問題――もう一つの足かせ
 第38章 日中環境協力――後塵を拝する新ビジネス
 第39章 中国製品の安全性――“世界の工場”に募る不信感
 第40章 知財侵害と自主創新――偽物天国の汚名返上は可能か

IV 中国外交と「一国二制度」
 第41章 外交戦略――「全方位」で安定した国際環境を確保へ
 第42章 米中関係――「協調」と「摩擦」の大国間外交
 第43章 日中関係――ナショナリズムに翻弄される関係
 第44章 中露関係――「蜜月時代」に潜む不安要因
 第45章 上海協力機構――中露を中核に米一極支配に対抗
 第46章 朝鮮半島との関係――核問題で揺れ動く善隣友好
 第47章 対ASEAN外交――自由貿易協定てこに交流拡大
 第48章 中台関係――「現状維持」の陰で加速する経済一体化
 第49章 台湾の内政・外交・経済――馬英九政権の発足と自立化の行方
 第50章 香港・マカオの政治と経済――中国の行方の鍵握る「一国二制度」の実験


 まえがき

 本書は二〇〇〇年七月に刊行した『現代中国を知るための55章』と、その改訂版である二〇〇三年八月刊行の『現代中国を知るための60章』に続く第三版となる。今回は章の数を五〇に絞り、その分、内容を深めることに注意を払った。第二版同様全面的な書き直し作業を行った。
 明石書店のこのシリーズで第三版まで版を重ねたのは初めてのケースであろう。それは『現代中国を知る』シリーズが読者の支持を得たことにもよるが、それ以上に現代中国が急速に変貌しており、現代中国を知るためには新しい情勢とその問題を確実に捉えていくことが不可欠になってきたためと言えよう。
(…中略…)
 二〇〇五年の反日デモの発生や二〇〇八年のチベット問題をめぐる愛国主義の高まりは、国際情勢に対する認識の低さ、それを許す国内的な貧富の偏り、教育レベルを露呈した。「民族復興」の願いは内実を伴わず、結局情緒的な愛国主義の高まりを生み出した。国際社会を率いる責任大国としてははなはだ首を傾げざるをえない事態を招いている。
 ただ愛国主義に燃えた大衆世論ばかりを批判するわけにはいかない。九〇年代、国家存亡の危機を迎えた天安門事件の後、愛国主義教育を実施し、大衆の愛国主義に訴えることで、海外からの干渉を乗り切り、今日の大国化を実現したという経緯もある。九〇年代の改革開放路線はトウ小平の号令で加速したが、一方ではアメリカを中心とする外国の干渉に対する半信半疑の改革開放であった。九八年八月、江沢民総書記(当時)が一時帰国中の中国の海外駐在大使らを前に行った「当面の国際情勢とわれわれの外交活動」という演説では当時の国際情勢を、こう分析している。
 「中国は社会主義国家であり、また世界最大の発展途上国として、多極化の中でそれなりの地位と役割を担う」
 「だが、アメリカと西側の大国の一部の人が、わが国に対して、西欧化、分断化という政治的陰謀を放棄することはありえない」
 「封じ込め策を使うか関与政策を取るかに関係なく、本質は変わらず、その目的はわが国の社会主義制度を改変し、最終的にわが国に西側の資本主義システムを持ち込もうとする」
 現在、中国をめぐる国際情勢はまったく変わっている。しかし、その転換の方向は明確にされず、大衆世論はまだ九〇年代の愛国主義教育の枠の下にある。チベットの暴動やそれに端を発した五輪聖火リレーに対する妨害への国際社会の同情は、中国の大衆の目に、中国の大国化への、海外の干渉であり、やっかみと映る。中国当局は、この大衆の愛国主義の高まりを演出し、利用しつつ、チベット問題をめぐる外部からの圧力や四川大地震の危機的状況を乗り切ろうとしている。
 われわれは中国の大国化の動きを見るとき、すぐその脅威に思いを寄せがちだが、本書で展開しているように、実にさまざまな課題、問題点を抱えている「傷だらけの大国」である。

(…中略…)

 (……)いたずらに中国の脅威をあおることは、かえってマイナスだと言えよう。むしろ日中間には、共通の利益が多く、それを拡大することによって、中国の脅威は減少していく。本書では、中国の脆弱なポイントが数多く紹介されている。それは中国をあげつらうためでも、中国崩壊論を説こうとしているわけでもない。中国の問題点をしっかり理解することで、中国との共生を図る道を探ることが可能になると考えるからだ。国際社会の中で、存在感を増す中国を理解することがますます重要になっている。本書がその手助けとなれば幸いである。
 最後に、編著者の変更について紹介しておきたい。第三版では、あらたに藤野彰・読売新聞編集委員にも編著者に加わっていただいた。中国駐在が長く、数多くの現場、関係者と接触してきたベテランチャイナウォッチャーである。藤野氏には、中国が直面する政治体制改革などの課題のほか、建国以来の歴史や共産党統治の仕組みなど基本的な問題についても執筆してもらった。また同じ読売新聞の関泰晴記者と北海道大学メディア・コミュニケーション研究院の西茹・専門研究員にも専門分野の執筆をお願いした。

  二〇〇八年五月   高井 潔司

目次

1 大国化の中の政治(責任大国とナショナリズム―漂流する国際協調路線;「和諧社会」の建設―調和とバランスを求めて ほか)
2 経済と社会の動き(二〇〇〇年代の超高度成長―変わらぬ過剰投資体質;世界経済へのインパクト―貿易摩擦に苦慮する「世界の工場」 ほか)
3 直面する課題の数々(拡大する格差―偏在する富の中での共存;日中経済関係―双方向での交流に ほか)
4 中国外交と「一国二制度」(外交戦略―「全方位」で安定した国際環境を確保へ;米中関係―「協調」と「摩擦」の大国間外交 ほか)

著者等紹介

高井潔司[タカイキヨシ]
北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院教授、1948年生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。読売新聞社テヘラン特派員、上海特派員、北京支局長、論説委員などを歴任して99年北海道大学教授に転出

藤野彰[フジノアキラ]
読売新聞東京本社編集委員。1955年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。上海特派員、北京特派員、シンガポール支局長、国際部次長、中国総局長(2回)などを経て2006年12月より現職

遊川和郎[ユカワカズオ]
北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授。1959年生まれ。東京外国語大学中国語科卒。外務省専門調査員(在香港日本総領事館)、(株)日興リサーチセンター上海駐在員事務所長等を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ちくわん

10
2008年8月の本。「現代中国を知るための50章(第3版)」。第1版は55章、第2版は60章、第4版は40章、第5版は44章。たぶん2020年には第6版が出版される。第3版は、やはり古い。中国は14か国と国境を接しているとあるが、今もか?2019/12/07

S K

0
現代中国の知識がほとんどなかったので読んでみた。政治や経済などしっかりまとまっていたと思う。2016/04/24

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