明石ライブラリー<br> 日本の国籍制度とコリア系日本人

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明石ライブラリー
日本の国籍制度とコリア系日本人

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  • サイズ B6判/ページ数 190p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784750324111
  • NDC分類 324.87
  • Cコード C0336

出版社内容情報

国籍の問題を通して、「国民」あるいは「日本人」とは誰のことか、今後の日本の進むべき道は何かを考える。とりわけ、日本国籍を取得した在日コリアンの現状分析を中心にして、戦後の国籍制度、外国人政策などに論及し、明治初期の国籍法成立にさかのぼる。

はじめに
序論 在日コリアンの国籍取得とコリア系日本人
 はじめに
 一 「帰化モデル」と「参政権モデル」の議論
 二 「コリア系日本人」
 三 制度・政策論的な対応策と社会・文化的な対応策
 まとめ――在日外国人の国民編入の議論に向けて
第一章 戦後日本政府にとっての国籍制度とネーションの設定
 はじめに
 一 終戦直後から一九五二年まで
 二 一九五二年~一九八四年までの言説
 三 国籍法改正と「日本人」イメージの変容
 四 一九九〇年以降の傾向
 まとめ
第二章 戦後日本国籍取得者の概況
 はじめに
 一 日本国籍取得者の現状
 二 在日コリアン社会における日本国籍取得の意味
 三 在日華僑社会における日本国籍取得者
 四 国際結婚
 まとめ
第三章 コリア系日本人への意識調査
 一 質問票調査の概要
 二 帰化理由
 三 エスニック・アイデンティティの変化
 まとめ
第四章 コリア系日本人のアイデンティティに関する理念型的把握
 一 コリア系日本人のアイデンティティ構築の分類枠組み
 二 事例分析
 まとめ
第五章 日本国籍取得者のライフストーリー
 はじめに
 一 日本国籍取得者の事例:山森由紀子(仮名)
 二 事例分析:国籍取得とナショナル・アイデンティティ
 まとめ
補論 近代日本における国籍制度の誕生
 一 血統主義の採用
 二 帰化制度の規定
 まとめ――戦後への継続性
出典一覧
参考・引用文献

はじめに
 一九九〇年代、初学者であった私が最も興味を持ったのが国家論であった。ネーション(国民)とは「想像の共同体」である、伝統とは常に創造されているものである、国民国家は解体しつつある、そして日本は決して単一民族で構成されているわけではない。こういった議論を目の当たりにして強く影響を受けた。そしてそのことが日本人/外国人という区分への強烈な違和感となって、現在の研究につながっている。このような違和感は、少なくとも私の身近にいる若い世代には共有されているようである。ある大学の講義でもらった学生のコメントには「日本を単一民族国家だと思うのはすでに古い考えだ」というものがあった。また「そもそも自分は地球人だと思う」といった意見も聞かれる。時代は着実に変化しつつある。
 ただしそのような認識や価値観だけでは越えられない現実がある。外国人労働者の受け入れ問題、彼らの子弟への教育問題、エスニシティ・民族問題、そして在日コリアンへの差別問題など枚挙にいとまがない。グローバルな視点を持つと同時に、自分の所属する社会を直視し、それらの問題群に正面から向かっていく必要がある。そのためには歴史や文化、そして現状を知ることが大切なのはいうまでもないだろう。
 本書は戦後日本の国籍(制度)を一つの社会的構築物として捉え、様々な視点から分析し、「日本人」や「外国人」といったカテゴリーの政治性を検証している。その意味では社会科学における客観性を第一に重視しているものである。しかし同時に社会政策への橋渡しも意識している。というのもこれまで日本の外国人政策は、基本的に権利付与が中心に行なわれていた。つまり長年日本に住み続けている外国籍者に、どの程度まで国民と同様の権利を与えるのかが問題であった。その結果一九八〇年代に在日外国人への社会保障制度がほぼ整備され、一九九〇年代には残された権利として政治的な権利の保障が注目を集めている。それに対し、すでに実質的な日本の構成員となっている外国籍者を、積極的に日本国民へ組み入れてゆくという国民編入の議論や、国籍取得者の生活世界についてはあまり注目されてなかった。現代の日本では短期で来訪する外国籍者から、実質的には国民となんら変わらない生活を送っている外国籍者、そして後天的に日本国民になった人も存在する。にもかかわらず現在の日本には、短期滞在者から永住者(移民)、そして国民へスムーズに身分が移行できるようなシステムは存在しない。国籍という現象は今後の国民、日本人とは誰か、そしてどのような国家をこれから望んでゆくのかを考える上で格好の素材といえる。
 また本書では戦後日本の国籍制度に翻弄されてきた人々、コリア系日本人(日本国籍を取得した在日コリアン)に注目している。彼らは長い間、様々な理由から社会的に不可視な状態に置かれていた。彼らの失われた声を回復し、日本人がいかに多様な出自を持つ人々によって構成されているのかを示したい。また彼らの存在は、今後の内なる国際化や多文化化を考える上で重要なものとなってくるだろう。なぜなら自らがコリア系日本人であることを、抵抗なく表明できるかが、日本社会の寛容性や多文化性を測る一つの指標となりえるからである。本書の内容は次のようになっている。

 序論は国民編入の議論の中心ともいえる「帰化モデル」の議論と、これまで主流であった「参政権モデル」の議論を日本の文脈から対比している。その際、コリア系日本人の可能性についてもあわせて提示している。これは二〇〇五年に行なわれた「在日コリアンの国籍取得権確立協議会」による第二回大会での講演内容が中心になっている。そのため総論的な意味あいを持つ。
 第一章においては、行政の言説内部において戦後日本の単一民族神話の内容が、徐々に変化していることを指摘している。単一民族神話については昨今の議論で度々登場するが、その言葉が指す内容自体が、戦後も徐々に変化していることに注目してほしい。第二章は戦後の日本国籍取得者の概況を、民族団体の視点を含め紹介している。特に先にのべたコリア系日本人が何故日本社会で不可視になってきた(いる)のか、その構造的な問題を指摘している。
 次に第三章から第五章までは日本国籍を取得した人々の現状を、具体的な調査データや聞き取りの結果から提示している。第三章は二〇〇〇年に行なった、コリア系日本人への意識調査の結果を紹介している。国籍取得の理由、国籍取得前後の意識の変化、また寄せられたコメントの分析等を行なっている。第四章ではコリア系日本人への実際の聞き取り調査の結果を分析し、アイデンティティ構築の志向性を理念型として提示している。その際、実際の語りも紹介し、国籍取得の経緯や日本人意識を具体的な水準で明らかにしている。第五章では韓国人と華僑の血統を持つ、ある華人のライフストーリーを紹介している。より具体的な生活史に注目することで、多層化するエスニック意識と国籍の関係を浮き彫りにした。
 補論では明治初期の国籍法成立に関してまとめてある。特に出生による国籍取得の原理として血統主義が採用された経緯と、明治初期の帰化制度についてのべている。というのも国籍制度の背景にある国家の論理は、戦後にいたるまで継続していると考えられるからである。参考として読んでいただきたい。
 本書はこれまで執筆してきた論考等をまとめたものである。そのためそれぞれの章はある程度独立して読めるものとなっているので、興味のある章だけを読んでいただいてもかまわない(出典に関しては巻末参照)。ただし再掲するにあたり加筆、修正および、重複する部分等の削除を行なった。本書を通じて、現在かかわっている「在日コリアンの国籍取得権確立協議会」および「外国人政策研究所」の活動に、微力ながら力添えできれば嬉しい。そしてなによりコリア系日本人の方々、そして多くの外国籍者の方々にとって生きやすい社会が構築されることを願ってやまない。

 本書ができるまでに様々な人々の助力があったことはいうまでもない。「確立協」や「政策研究所」での熱い議論が、本書を刊行するきっかけになったのは間違いない。また論文作成の時点では多くの方にアドバイスや、ご指導をいただいた。そして個人の内面にかかわる問題にもかかわらず、心よく調査を引き受けてくださった方々がいなければこの研究をすすめることはできなかった。個々の方々のお名前を挙げることはひかえるが、それらの方々にこの場を借りて心からお礼申し上げたい。
 最後に長年遅筆な私を叱咤激励し、早く研究を形にしてまとめるようにと常に声をかけてくださった恩師、駒井洋先生に本書を捧げたい。

二〇〇六年九月一日
佐々木てる

目次

序論 在日コリアンの国籍取得とコリア系日本人
第1章 戦後日本政府にとっての国籍制度とネーションの設定
第2章 戦後日本国籍取得者の概況
第3章 コリア系日本人への意識調査
第4章 コリア系日本人のアイデンティティに関する理念型的把握
第5章 日本国籍取得者のライフストーリー
補論 近代日本における国籍制度の誕生

著者等紹介

佐々木てる[ササキテル]
1968年生まれ。ボストン出身。博士(社会学)。筑波大学社会科学専攻修了。筑波大学人文社会科学研究科社会学専攻技術職員(準研究員)。主な専門は国際社会学、ネーション・エスニシティ研究、生活史研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。