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出版社内容情報
『ペルセポリス』で話題をまいたフランス漫画界の寵児サトラピが、現代イランのさまざまな世代の女性の恋愛、性、結婚観について、ユーモアと毒気をちりばめながら綴るコミックエッセイ。ダメ男たちにあきれながらもポジティブに生きる等身大の女性像を描く。
女たちのホンネ・トークはおもしろいゾ(山岸智子)
本書は、パーティーの片づけの後の9名の女性の「茶飲み話」をグラフィックに描いたものである。彼女らはそれぞれの、あるいはその知人の、結婚や恋愛にまつわる話を語り、イランにおける男女関係の実像をおもしろ可笑しく私たちに教えてくれる。
話者として登場する女たちは、経済的には一様に上流から中流の、生活に困っていない階層に属するが、年齢は作者の祖母の年代から同年代までと幅広い。この年齢の幅が、イランの過去半世紀ほどの、結婚をめぐる環境の変化を示すことになっている。
親の言いつけ通りに結婚しなくてはならない、処女性が重要視される、など不自由な条件下で結婚しながらも、女たちは、それなりの策を弄して、花婿を騙したり、逃げ出したり、愛人をつくったり…とたくましく自分たちの運命を切り開いている。また革命後、ヨーロッパに住むイラン人男性との結婚を望む若い女性たちの失敗談も描かれている。
「愛人の生活こそ最高」「(ペニスは)そもそも見た目のよいものではないから」「1度離婚したなら、好きなだけセックスをしても誰にもわからない、メーターなんかついていない(のだから)」など、ドッキリするようなホンネがあちらこちらに散りばめられ、その合間に大笑いのシーンが描かれ、女たちのホンネ・トークは読者を飽きさせることがない。
作者はイランに生まれて、ヨーロッパでグラフィック・アートの仕事に就いている。少女の頃に経験した革命や戦争、さらにはヨーロッパに移ってからの青春を『ペルセポリス』(バジリコより邦訳あり)というグラフィックな自伝に描いて欧米で高い評価を得た。アメリカでは2004年のアレックス賞(アメリカ図書館協会が青年向けに推奨する本に贈る賞)を受賞している。サトラピーは創作意欲が盛んな様子で、2000年からこれまでに(共著も含め)10冊の本を世に出している。原作はフランス語だが、『ペルセポリス』『刺繍』『プラム入り鶏シチュー(Poulet aux prunes
2004)』は英語のみならずスペイン語にも翻訳されている。
『ペルセポリス』に比べると、本書のページのコマ割りははるかに自由になっており、同じモノトーンでもずっと明るい印象を受ける。内容が自伝よりも気楽なためか、著者のユーモアのセンスもさらに光っているように感じられる。「私の右に座る人は私の鼻が邪魔になって向こう側が見えない」と登場人物のひとりが語るシーンやベッドの下でジャッカルの花婿がアオーンと啼いている図など、グラフィックな表現ならではのおかしみがある。
イラン人女性の日常生活と風俗のディテールが自然にわかることも本書のいいところだ。女同士でお茶を飲んでおしゃべりをする楽しみ(「心の換気」と作者は言う)、そして、結婚に反対する彼氏の母に悩む女性が女占い師に教えてもらうおまじない、大きな鼻を削ったりバストを豊かにみせたりするための整形手術、果ては「刺繍」と称する処女膜再生まで…。
イランの生活はいろいろ厳しいけど愉快、それは「おしゃべり」でカタルシスを得られるから。イランでの私の生活実感を、こうしてビジュアルに伝えてくれる本に出会えたことを嬉しく思っている。どうか多くの読者にこの「カタルシス」を楽しんでもらえますように。
感想・レビュー
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どんぐり
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
syaori
neimu
ひかる