インド民主主義の変容

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  • サイズ A5判/ページ数 371p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784750322834
  • NDC分類 314.892
  • Cコード C0036

出版社内容情報

独立以来の民主主義国であるインドの存在感が、近年急速に高まっている。2004年総選挙では会議派が政権を奪還、ヴァジペイー前首相は潔く自ら退陣した。しかし、11億近くの民を抱える政治の実態は不明な点も多い。
本書は、総勢28名の研究者による第14回連邦下院の選挙結果を通じたインド政治の総合的分析である。全インド28州および3連邦直轄地を網羅し、中央及びそれぞれの州の政治・経済情勢を分析するとともに、すべての議席獲得政党についても解説している。
実態を把握し易いよう資料を多用した、いわば現代インド政治のエンサイクロペディア。

まえがき
第1部 総論
 第1章 インド民主主義と選挙(広瀬 崇子)
 第2章 第14回連邦下院選挙の経過と結果(南埜 猛)
 第3章 第14回連邦下院選挙の位置づけ(広瀬 崇子)
第2部 政党の動向
 第4章 インド国民会議派(佐藤 宏)
 第5章 インド人民党と国民民主連合(近藤 光博)
 第6章 インド共産党(M)と左翼戦線(井上 恭子)
 第7章 北部諸州の政党(近藤 則夫/伊豆山 真理/伊藤 融)
 第8章 東・北東部諸州の政党(吉田 修/井上 恭子/木村 真希子/セン[譫のごんべんがないもの] 彩鳳/峯島 秀暢)
 第9章 西部諸州の政党(小川 道大/井上 恭子)
 第10章 南部諸州の政党(浅野 宜之/北川 将之/南埜 猛/三輪 博樹)
第3部 主要争点
 第11章 経済政策(久保木 一政)
 第12章 国防・外交政策(堀本 武功)
 第13章 カシミール政策(伊藤 融)
第4部 周辺諸国の反応
 第14章 パキスタン(井上 あえか)
 第15章 中国(高木 誠一郎)
 第16章 バングラデシュ・スリランカ・ネパール(村山 真弓/荒井 悦代/井上 恭子)
第5部 北部諸州の動向
 第17章 ウッタル・プラデーシュ州――インド人民党の後退と社会主義党の前進(近藤 則夫)
 第18章 ウッタラーンチャル州──二大政党の拮抗、社会主義党の議席獲得(林田 孝子)
 第19章 ジャンムー・カシミール州──中央の政権交代の先駆け(伊豆山 真理)
 第20章 マディヤ・プラデーシュ州──2003年州議会選挙の再現(角田 恵里)
 第21章 パンジャーブ州──会議派の敗北とアカーリー・ダルの復活(伊藤 融)
 第22章 チャンディーガル──都市での大物対決(伊藤 融)
 第23章 ハリヤナ州──州政権に対する不満と「現職批判」で会議派が議席をほぼ独占(夛賀 政幸)
 第24章 デリー──会議派の大勝(佐藤 仁美)
 第25章 ヒマーチャル・プラデーシュ州──会議派が議席回復(峯島 秀暢)
第6部 東・北東部諸州の動向
 第26章 ビハール州――「カースト民主主義」の勝利(吉田 修)
 第27章 オリッサ州──野党連合の「不戦敗」と中央の政治的動きを読み違えた選挙民(吉田 修)
 第28章 ジャールカンド州──新州分離の意味を問われたインド人民党(吉田 修)
 第29章 チャッティースガル州──会議派不信とサンガ・パリワールの浸透(上田 知亮)
 第30章 西ベンガル州──またも左翼戦線が圧勝(井上 恭子)
 第31章 北東諸州(木村 真希子/峯島 秀暢/セン[譫のごんべんがないもの] 彩鳳)
 第32章 シッキム州──シッキム民主戦線の優位確定(峯島 秀暢)
第7部 西部諸州の動向
 第33章 マハーラーシュトラ州──州内の経済格差と有権者の投票行動に注目して(小川 道大)
 第34章 グジャラート州――ヒンドゥー・ナショナリスト運動の岐路(近藤 光博)
 第35章 ラージャスターン州──インド人民党の圧勝(中島 岳志)
 第36章 ゴア州──会議派とBJPとの対決が定着(井上 恭子)
第8部 南部諸州の動向
 第37章 アーンドラ・プラデーシュ州──選挙協力と現職への不満の波による会議派の勝利(浅野 宜之)
 第38章 カルナータカ州──インド人民党の南部進出(北川 将之)
 第39章 タミル・ナードゥ州──「民主進歩連合」の圧勝(南埜 猛)
 第40章 ポンディシェリー──タミル・ナードゥ州政治に巻き込まれた選挙区(南埜 猛)
 第41章 ケーララ州――会議派の敗北と左派勢力の勝利(三輪 博樹)
資 料
索 引

まえがき
 21世紀に入って国際政治におけるインドの存在感が急速に高まってきた。最大の要因は急成長する経済であるが、同時に独立以来培ってきた民主主義が、この国の信頼を高めていることも事実である。選挙による政権交替がスムーズに行われ、しかも政策面での一定の継続性も維持される。こうしたインド民主主義の成熟度を示したのが、2004年に行われた第14回連邦下院選挙であった。選挙結果は、与野党の政治家自身を含む大方の予想に反するものであった。しかし、結果が判明すると即座に、ヴァジペイー首相は潔く敗北を認めて自ら退陣を表明し、替わって第1党となった会議派が政権を樹立した。マンモハン・シン新首相は、選挙公約である貧困対策を重視しつつも、経済自由化政策、外交政策などでは前政権の政策を概ね継承し、国際社会を安心させたのである。
 時間の経過とともに、インドの選挙は複雑さを増してきた。それぞれの州が独自の政党制を発達させ、それが中央の政治と絡んでくる。全国の選挙結果を集計すれば、名前を聞いたこともない政党が出現したり、前回は一大勢力をなしていた政党が姿を消したりしている。連合政権は定着したようだが、その実態は不明な点が多い。
 第13回連邦下院選挙(1999年)に続いて、第14回選挙(2004年)の選挙結果の総合的分析が実現した。2年がかりの作業となったが、総勢28名の研究者による分析である。今回の分析は、前回よりさらにカバーする領域を拡大して、4つの小さな連邦直轄地を除く、28州および3連邦直轄地を網羅し、それぞれの州/連邦直轄地の内情を分析するとともに、1議席でも確保した政党については残らず解説を設けた。インド政治のエンサイクロペディアとしての役割も果たしている。
 しかし、分析はそれだけにはとどまらず、今回は、州/連邦直轄地の経済事情にも注意を払い、それぞれの地域の特徴を浮き彫りにした上で、政党政治の分析を試みている。なお、本書の各州/連邦直轄地の経済指標の中で、州内総生産を示しているが、インド国内における順位は、本書で扱っている28州と3連邦直轄地の合計31地域の中での序列である。
 さらに本書は、できるだけ多くの資料を提供しようと努めた。インドの選挙分析では、膨大な量の情報を正確に把握し、かつそれを整理することが最初で、しかも最もやっかいな仕事である。本書では、データを主に選挙委員会が提供している公式ウェブサイトに依拠し、かつ新聞や雑誌論文などを参考にしながらまとめた。そして資料をわかりやすく提示するためにデータを表にまとめ、また地図を多く用いてインドの政治状況や選挙結果を空間的に理解しやすくするように工夫したつもりである。同時に選挙結果は、州/連邦直轄地単位で各章の中で表にして示し、連合政権、同盟関係については、第3章で示した。
 本書の構成は、大きく3つの部分に分かれる。第1は、全国レベルおよび国際政治の観点からの分析で、争点ごとに主要政党の政策を分析し、また今回の選挙結果に対する近隣諸国の反応を扱っている。第1部、3部、4部である。第2は、個々の政党である。主要政党については詳細な分析を行い、その他の地域政党などには解説をつけた。2004年選挙で連邦下院の議席を獲得した政党すべてが網羅されている。第2部である。なお、各政党の特徴をとらえた上で主要争点についての各政党の主張を紹介するという意図から、政党紹介と争点、諸外国の反応の順番を入れ替えた。第3は、州/連邦直轄地ごとの分析を行っており、本書の中心部分をなす。第5部~8部である。さらに巻末には資料をまとめてある。
 本書は、平成15~17年度科学研究費基盤研究(B)「インド選挙システムの総合的研究」の研究成果である。また、出版は、独立行政法人日本学術振興会平成17年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)の助成によって可能となった。この場を借りて感謝の意を表したい。

2006年2月 編者

内容説明

独立以来の民主主義国であるインドの存在感が、近年急速に高まっている。二〇〇四年の第14回連邦下院選挙では会議派が政権を奪還、ヴァジペイー前首相は潔く自ら退陣した。しかし、約11億の民を抱える政治の実態は不明な点も多い。本書は、総勢28名の研究者による選挙結果をもとにしたインド政治の総合的分析である。全インド28州および3連邦直轄地を網羅し、図表・地図を多用して、中央及びぞれぞれの州の政治・経済情勢を分析するとともに、すべての議席獲得政党についても解説している。いわば現代インド政治のエンサイクロペディア。

目次

第1部 総論
第2部 政党の動向
第3部 主要争点
第4部 周辺諸国の反応
第5部 北部諸州の動向
第6部 東・北東部諸州の動向
第7部 西部諸州の動向
第8部 南部諸州の動向
資料

著者等紹介

広瀬崇子[ヒロセタカコ]
1948年生まれ。専修大学法学部教授、ロンドン大学Ph.D.専門、南アジア政治・外交

南埜猛[ミナミノタケシ]
1964年生まれ。兵庫教育大学学校教育学部・助教授。専門、地理学

井上恭子[イノウエキョウコ]
1944年生まれ。大東文化大学(国際関係学部)教授。専門、南アジア政治・国際関係(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

可兒

0
各地の党勢についての解説が異様に印象深かった。というより、それ以外について記憶がない2008/11/05

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