スリランカと民族―シンハラ・ナショナリズムの形成とマイノリティ集団

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  • サイズ A5判/ページ数 271p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784750322629
  • NDC分類 316.825
  • Cコード C0036

出版社内容情報

スリランカを揺るがし続ける内戦はなぜ生まれたのか。イギリスによる植民地統治期から独立後現在に至るまでのスリランカにおけるナショナリズムの展開と、深刻化する民族対立の現実を豊富な一次資料をもとに読み解く。南アジア史のみならず、民族問題に関心をもつ人には必携の一冊。

はじめに
第1章 仏教復興運動とシンハラ・ナショナリズム
 1 初期のプロテスタント・ミッションとスリランカ社会
 2 神智協会と反キリスト教運動
 3 ダルマパーラとシンハラ・アイデンティティ
 4 キリスト教と「脱民族化」
 おわりに
第2章 反ムーア人暴動とシンハラ・ナショナリズムの展開
 1 新興エリート層と禁酒運動
 2 ムーア人と反ムーア人宣伝
 3 一九一五年の反ムーア人暴動
 4 政庁とシンハラ人エリートたち
 おわりに
第3章 反マラヤーリ人運動とその背景
 1 大英帝国と移民の往来
 2 移民排斥運動の背景
 3 マラヤーリ人移民とその特徴
 4 反マラヤーリ人運動の展開
 5 セイロン人化政策の進行およびその後の展開
第4章 スリランカにおけるインド人移民と植民地政策
 1 移民問題と国家評議会
 2 反移民意識の高まりと入国移民委員会
 3 一九三九年の移民追放政策
 おわりに
第5章 植民地下におけるプランテーションとインド人移民
 1 プランテーションとシンハラ人社会
 2 プランテーション労働者と「セイロン化」政策
 3 民族的対立の激化と移民労働者の組織化
 4 「セイロン人」規定とクナヴェスミーア農園問題
 おわりに
第6章 独立後スリランカにおけるインド・タミル人と政治
 1 トンダマーンの台頭
 2 インド・タミル人と国籍問題
 3 土地改革と排斥運動
 4 労働組合の展開と国籍問題の変遷
 5 社会変容とアイデンティティ
 おわりに
第7章 独立後スリランカにおける民族問題
 1 スリランカの民族問題とシンハラ・ナショナリズム
 2 バンダーラナーヤカとシンハラ・オンリー政策
 3 武装勢力の台頭と一九八三年の暴動
 4 インド・スリランカ和平協定
 5 人民連合政権の成立と分権化の模索
 6 停戦の成立と今後の展望
 おわりに
あとがき
索 引

あとがき
 私とスリランカとの出会いは、インド・ケーララ州コチ(コチン)にある公文書館においてであった。当時私はケーララにおけるキリスト教ミッションの活動に関心をもっており、ロンドン大学に提出する博士論文のための史料収集をしていた。そのとき偶然手にしたのが、本書第三章で扱った「セイロンにおけるマラヤーリ人と反マラヤーリ人運動に関する報告書」というかなり長い文書であった。私はそれをとても興味深く読んだ。それは一つには、移民に対する排斥、人種差別という問題が、当時(一九九〇年代前半)私が生活していたイギリスを含むヨーロッパ地域では深刻な問題となっていたからである。当時のヨーロッパの問題と一九三〇年代のスリランカの問題は大きく重なるように思えた。もう一つは、それまでつねにどこかで気になっていたスリランカの民族紛争に、この移民排斥運動は深くかかわるのではないかと思えたことである。
 イギリスに戻ってから、私は博士論文の執筆をしながら、スリランカについての文献や史料の収集を行った。この点でロンドンに滞在できたことはとても幸運だったと思う。私が博士課程の学生として通っていた東洋アフリカ研究学院の図書館には非常に多くのスリランカに関する書籍や雑誌があった。調べれば調べるほど多くの優れた、しかも非常に興味深い研究がなされてきたことがわかり、ますますスリランカへの関心が高まった。また、キューにあるパブリック・レコード・オフィス(現在は国立公文書館と呼ばれている)や、当時はウォータールーにあった旧インド省図書館(現在は大英図書館内にある)には、まだ研究者によってほとんど使われていないと思われる史料が多くあった。こうして、博士論文を提出し終えると、私の関心はすっかりスリランカに向かってしまった。その後、この一九三〇年代の移民排斥運動を中心に、その背景となるシンハラ・ナショナリズムの形成過程、そして移民排斥運動以後の民族問題の展開に関して調べていった。本書はそのつたない成果である。

川島 耕司

目次

第1章 仏教復興運動とシンハラ・ナショナリズム
第2章 反ムーア人暴動とシンハラ・ナショナリズムの展開
第3章 反マラヤーリ人運動とその背景
第4章 スリランカにおけるインド人移民と植民地政策
第5章 植民地下におけるプランテーションとインド人移民
第6章 独立後スリランカにおけるインド・タミル人と政治
第7章 独立後スリランカにおける民族問題

著者等紹介

川島耕司[カワシマコウジ]
1958年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。ロンドン大学よりPh.D.取得(歴史学)。名古屋大学大学院博士後期課程修了。国士舘大学政経学部助教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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可兒

2
仏教復興運動の箇所だけ集中して読んだ。あとの民族問題は斜め読み2012/07/23

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