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現代ブータンを知るための60章

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  • サイズ B6判/ページ数 355p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784750320854
  • NDC分類 302.258
  • Cコード C0336

出版社内容情報

「持続可能な開発と経済発展の両立」を目指すブータン。この国の特徴である豊かな自然環境と深い精神文化を軸に、王政の現在から世界をリードする開発理念「GNH思想」、さらに伝統建築物ゾンの役割の変遷まで、歴史・社会・文化を幅広く紹介する。

はじめに
 1 概 要
第1章 気候と地勢――ヒマラヤ山脈の奥深くに宿る心
第2章 ブータンの言語――多様なる言語事情
第3章 多様な民族――東西文化の違いと民族の変容
第4章 いまでも残る旧支配階級――地方有力者と現王朝との関係
第5章 王政の推移――王政の成立過程とその現在
第6章 国教――カーギュ派・ドゥック派の唯一の独立国
第7章 GNH――世界をリードする新たな開発理念
 2 社会と生活
第8章 道路事情――まがりくねった道の先には
第9章 医療――西洋医学と伝統治療
第10章 教育――ゾンカ、それとも英語? ゆれる教育方針
第11章 IT事情――電話、テレビ、インターネットが導入されて
第12章 スポーツ事情――サッカーから体育教育まで
第13章 交通事情――広がる車社会と“手信号のおまわりさん”
第14章 電気――国をあげての大規模水力発電プロジェクト
第15章 マスコミ――噂話からテレビまで、ブータンの情報伝達の仕組み
第16章 女性をとりまく生活環境――現代主婦のかかえるさまざまな問題
第17章 水事情――豊富な水のイメージに反して、深刻化する水不足
第18章 観光――複雑な観光料金文化と村社会
 5 国際関係
第33章 消失していった近隣王国――シッキム、チベットの消滅からブータンが学んだこと
第34章 西岡京治のまいた種――親日国の歴史に刻まれる一人の日本人
第35章 隣国インドとの関係――インドを支配していたイギリスとの歴史を中心に
第36章 SAARC諸国とのつながり――インドの脅威に足並みの揃わない南アジア諸国
第37章 ブータンで働く外国人――インド人抜きには語れない外国人労働者事情
第38章 ブータンに存在する反インド政府勢力――ブータン王国存続の最大の危機
 6 歴史と文化
第39章 伝統建築物――地産地消の具象化
第40章 ゾン――政治と宗教の中心シンボル
第41章 宗教建築物――ブータンの景観を形作るもの
第42章 民家のいま――伝統建築とその生活様式の変化
第43章 マナーや礼儀作法――狭い社会で生きるコツ
第44章 トランスヒューマンス――生活のパターンにしみついている遊牧民的素養
第45章 伝統貿易――歴史の舞台となった古い交易路
第46章 生活用具――遊牧民の末裔としての痕跡
第47章 法要や葬送――信仰と共に生きる人びと
 7 生活に根付く宗教
第48章 

はじめに
 時代の流れと共に古き習慣は廃れ、西洋的な価値観が横行する途上国が多いなか、ブータンは辛うじて、その自然環境ならびに伝統文化を保っている。それは政策によるところも大きいのだが、多くのブータン人がこよなく自然を愛し、自然と共に育ったことに起因している。また、立ち振る舞いが優雅であることを誉れとしていたブータンの豊かな精神文化は、人の豊かさの定義は物質面での豊かさだけでないことを教えてくれる。
 多くの日本人は、ブータンのなかにノスタルジーを見いだしている。それは日本人と顔つきやしぐさが似ているだけでなく、安心感のようなものが国全体から感じられるからであろう。このなんともいえない安心感こそが、ブータン発の思想であるGNH思想(第7章参照)の原点であると筆者は考えている。
 いまでも多くのメディアに、その伝統文化と共に「桃源郷」として取り上げられることの多いブータン。しかし、昨今の世界の時代の流れは、ブータンがヒマラヤの桃源郷でいられなくなることを余儀なくしている。そんな過渡期のブータンで、数年間、生活者として滞在した視点で本書は書かれている。政策として文化保護、自然保護を前面に出しながら、国中に流れ込での二年間を青年海外協力隊員としてブータンのプナカで過ごした。具体的には、プナカにあるプナカ・ゾンの改築工事に現地に駐在しながらかかわった。当時の生活状況は、テレビもなく電話も地方では一般的ではなかった。まさに田舎の農村の生活そのものだったので、ある意味伝統的な西ブータンの生活を満喫できたと言えよう。日本ではサラリーマンとして常に時間に追われる生活をしてきたので、そのあまりにも日本と違う緩やかなブータンの時間の流れの前に、徐々に心がほぐれていくのが自覚できるくらい素晴らしい時間を過ごせた。あくせくせずに生活を楽しむすべを、このときブータンから学んだ気がする。
 そして二〇〇二年七月から二〇〇四年七月までの二年間、約七年ぶりに再びブータンの地を踏んだ。こんどは青年海外協力隊シニア隊員として、学校を設計するために首都ティンプに赴任した。この数年間の移り変わりは目覚しく、その社会制度の複雑化と共に、人びとの考え方が移り変わっていくさまをありありと感じた。そのことが、本書を執筆するきっかけともなった。
 日本で暮らしていると、他国で起こりつつある出来事に実感がともなわないことが多い。メディアは頻繁に海外のニュース

目次

1 概要
2 社会と生活
3 経済
4 政治
5 国際関係
6 歴史と文化
7 生活に根付く宗教
8 環境と資源

著者等紹介

平山修一[ヒラヤマシュウイチ]
株式会社シーエスジェイ調査・企画部研究員。1966年生まれ。早稲田大学大学院アジア・太平洋研究科修士課程修了(国際関係学)。一級建築士、一級土木施工管理技士、環境社会学会会員、開発技術学会会員、GNH研究所代表
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Sanchai

1
そろそろ改訂した方がいいのではないかと思う。いい本だけど、発刊10年も経過すると、記述内容に古さが感じられる。五代国王も既に戴冠10周年を迎えたぐらいだから。2017/02/07

Minakami

0
貴重なブータン資料。著者に強く感謝したい。2012/11/05

Sanchai

0
くどいぐらいに網羅されているが、かなり詳しいところまで理解できる。マナーとかまで書かれているのは驚き。青年海外協力隊員として現地に2年間とか滞在した人が書いているが、それにしても2年間でこれほど調べていたとしたら、相当な調査能力だと思う。2012/06/17

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