出版社内容情報
個人より全体の調和が優先される社会主義体制のもと、中国における青少年犯罪の現況を、特に中国特有の司法制度の側面から、その社会的背景及び実務における実際を可能な限り分析し、中国の青少年保護制度の国際的位置付けを検証する。
第1章 中国における非行少年と人権
第2章 国際的視野からみた中国の少年法制
(1)社会主義国における少年法制
(2)国連規約と少年法制
1 少年犯罪者の定義
2 触法少年、ぐ犯少年
3 刑事責任年齢
4 少年司法の目的
5 少年の権利
6 少年の名誉とプライバシーの保護
7 強制措置
8 事件の審判と弁護
9 多様な処遇方法
10 検討
第3章 中華人民共和国の青少年刑事司法
(1)現行刑法の青少年刑事司法
(2)青少年専門立法の歩み
第4章 青少年非行の司法前処理
(1)治安管理法による処罰
(2)公安機関による少年非行への関与
(3)人民検察院の少年非行への関与
第5章 青少年の刑事訴訟手続
(1)未成年者刑事訴訟手続
1 特殊な保護原則
2 審判と教育の結合原則
3 全面調査の原則
4 分離拘禁の原則
5 迅速、簡約な処理の原則
6 総合管理の原則
(2)未成年犯罪者訴訟事件の処理
1 要訴追事件
2 捜査
3 訴訟の提起
(3)審判(裁判)
1 審判(裁概略
(3)未成年者保護法制定後の動向
1 未成年者保護法の学習・宣伝
2 青少年法制の理論的研究の進展
3 未成年者保護法の執行状況の調査
(4)未成年者保護法の問題点
第8章 少年の矯正と保護
(1)少年犯管教所
1 入所後の集中的教育と訓練
2 所内生活
3 考査による賞罰
(2)工読学校
1 工読学校の性質、任務と設立指導思想
2 工読学校の設置と管理
3 工読学校への収容
4 工読学校の教育と学生管理
5 工読教育の成果及び犯罪予防における地位と効果
第9章 犯罪の予防と更生
(1)綜合治理
(2)犯罪の予防
1 犯罪予防の概念
2 犯罪予防と更生保護対策の問題点
第10章 少年犯罪の概況
1 現況
2 青少年犯罪の情況と特徴
3 青少年犯罪の類型とその特徴に関して
4 少年犯罪のグループ化
5 少年犯罪の変化の特徴
"序
中華人民共和国(以下、中国と略す)は、約12億3,000万人の人口(1999年現在)をかかえており、米国およびロシアの両国合計人口のほぼ2倍に日本の人口を加えた数に匹敵する。このうち18歳未満の未成年者の人口は3億人強であるといわれ、28歳以下の青少年が総人口の60%を占めるといわれている。大中都市では基本的に9年義務教育制度を実現し、全国の60%の県が中学校教育を普及させている。いうまでもなく中国は数千年の文化の歴史を有する国であり、56の多民族国家であり、厳刑・厳罰による犯罪対策の現実のなかにも、長い歴史の儒学思想の影響下において、根底には老人・年少者への教育、感化思想が伝統的に根付いている。しかし、いわゆる「儒教的人権論」が「現代的人権論」の架け橋となり得るかについては筆者の現在の認識では否定的である。
ともあれ、少年の保護に関する具体的な動きとしては、1970年代後半より法制度の整備が図られ、それぞれの法律によって保護がなされてきたが、いわゆる少年法というものは、それまでは存在しなかった。しかし、長年の懸案であった少年の保護制度は、1991年の「未成年者保護法」(以下、保護法と略す)の制定"
目次
第1章 中国における非行少年と人権
第2章 国際的視野からみた中国の少年法制
第3章 中華人民共和国の青少年刑事司法
第4章 青少年非行の司法前処理
第5章 青少年の刑事訴訟手続
第6章 青少年刑事司法
第7章 中華人民共和国未成年者保護法の制定
第8章 少年の矯正と保護
第9章 犯罪の予防と更生
第10章 少年犯罪の概況
著者等紹介
菊田幸一[キクタコウイチ]
1934年生まれ。1957年中央大学法学部卒業後、明治大学大学院にて刑事法学を専攻。在学中に法務省法務総合研究所研究官補となり、64年に大学院博士課程修了。1975年より、明治大学法学部教授(犯罪学)。弁護士。法学博士
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