世界歴史叢書
アフガニスタンの歴史と文化

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  • サイズ B6判/ページ数 526,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784750320700
  • NDC分類 226.2
  • Cコード C0322

出版社内容情報

中央アジア、中東そしてインド亜大陸と威信、富、征服、宗教的帰依を求め人びとが通過したアフガニスタン。その地勢的特徴を踏まえ民族集団の移動、文化・生活におよぶ先史時代から現代までの歴史を、考古学はじめ様々な言語による史料を駆使し縦横に論じる。

日本語版への序文
序文
第1章 ヒンドゥークシュ山脈
 現在のアフガニスタン/ヒンドゥークシュ山脈/南西アジアにおけるアフガニスタンの位置/自然環境/農業と牧畜
第2章 アフガニスタンの諸民族
 パシュトゥーン人/パシュトー語/パシュトゥーンの部族的構造/パシュトゥーン人の系譜/パシュトゥーン人の移動/パシュトゥーン人の生活/アフガニスタンのパシュトゥーン人/トルコ系民族集団/タージーク人/山岳タージーク人とイスマーイール派/ヌーリスターン人/バローチ人とブラーフーイー人/ハザーラ人/アイマーク人/少数民族集団
第3章 曙の時代
 金石併用時代/初期青銅器時代/中期青銅器時代/インダス文明
第4章 インド=イラン語族の到来
 インド=ヨーロッパ語族とインド=イラン語族/ステップ地帯の青銅器時代/インド=アーリア人/中近東の資料/インド=イラン人以前/ゾロアスター(ザラスシュトラ)/イランの文化と宗教
第5章 考古学とインド=イラン人
 バクトリア=マルギアナ考古学的複合体/マルギアナとの類似性/バクトリア=マルギアナ文化の背景/対外接触/編年/バクトリア=マルギアナ文化とインド=イラン人サーン朝の藩王/キオン人/エフタル/突厥/玄奘
第11章 イスラームの到来
 アラブ勢力の拡張/南部における戦闘/ザーブリスターン/東アフガニスタンのトルコ系王朝とインド系王朝/美術品/碑文/ハラジュ族
第12章 イラン系の王朝
 ニームルーズ/バルフのノフ・ゴンバド/サーマーン朝/ガズナ朝/ガズナ朝時代の芸術と文化/シャーナーメ/ゴール朝とホラズム・シャー朝/ゴール朝の遺物
第13章 モンゴル人
 チャガタイ・ウルス/ティームール/ティームールの後継者たち
第14章 アフガニスタン王国の建国に向かって
 ウズベク人/バーブル/ムガル朝とサファヴィー朝の間で/アフガン王国の勃興/パシュトゥーン族によるサファヴィー朝の打倒/ナーディル・シャー/カンダハールの陥落
第15章 サドーザイ朝
 アフマド・シャー・ドゥッラーニー――彼の功績/アフマド・シャーとその王朝/王国の衰退/アフガン国家の崩壊/バーラクザイ朝
第16章 英国との戦い
 第一次英・ア戦争/いまだ定まらぬ運命/終局/ドースト・ムハンマド・ハーンの二度目の統治/シェール・アリー/第二次英・ア戦争
第17章 アブドゥッラフマーン・ハーン朝


序文
 二〇〇一年九月一一日、テロリストたちがニューヨークとワシントンを襲い、何千人にも及ぶ人々を死にいたらしめ、その人々の家族に名状しがたい悲しみを与えた。彼らはまた、アフガニスタンを再び衆目の的に引き戻した。何年もの間、アフガニスタンは忘れられていたのも同然であった。それまでこの国については、ほとんどの人々は何も知らなかったであろう。知っていることといえば、せいぜい女性の存在が彼らの敬虔な夫たちをさらに世俗的な思考に誘惑することがないよう、この国の女性たちはチャードリーにすっぽり身を包まねばならないということぐらいであっただろう。イスラーム教は、このあまりにもかけ離れた国において、狂信的になってしまったように思われる。私たちは、覆い隠されているものを見逃さないよう、さらなる注意を払わなければならない。
 九月一一日のあの恐ろしい事件が、アフガニスタンの人々を急速に変わりつつある世界、インド・イランとの国境地である隔絶された谷間に暮らし、そこで生涯を終える人々にさえも影響を及ぼさずにはおかない地球規模で発展する世界、に接触させることになったのである。よそ者、たとえそれが世界的に指名手配されている凶悪テロわれわれ自身が書いているのですよ」と言ったことがある。それにしてもターリバーンは、異なった見地に立って物事をみている。彼らは、かたくなで、宗教的・政治的視野の狭さを示し、ただそれを傍観する人々を仰天させ、おりおり恐怖に陥れる。女性に対する彼らの態度、また彼らのアヘン取引の皮肉な開発行為は、ソビエト連邦を打ち破ったとき手に入れたこの国の威信さえも失墜させることとなった。それに続き彼らは国際テロリストグループと手を結び、常軌を逸することとなった。あの世界貿易センターに航空機が体当たりした後、ターリバーンは、彼ら自身の住む狭い谷間の国境線から遥か彼方に広がる、この上なく怒りに満ちた外の世界と対立し、自分たちの国を孤立させることとなったのである。
 ターリバーンは、アフガニスタンが国としての形跡をすべてなくしてしまったとき、権力の座にのし上がったのである。一九九二年までには、官僚たちや、アフガニスタンという国に関心を寄せていた有識者のグループのほとんどが殺害されるか、あるいはまた西洋に引き寄せられていった。ターリバーンはイスラーム教を利用し、国を特徴付けているモザイク状の宗教的・民族的存在に、まやかしの平和を押し付りわけ、それぞれの国の歴史は血なまぐさいものとして特徴付けられているのである。(後略)

目次

ヒンドゥークシュ山脈
アフガニスタンの諸民族
曙の時代
インド=イラン語族の到来
考古学とインド=イラン人
スキタイ騎馬民族
西方に向かって
ギリシア人
北方の支配者たち
西イランの再主張
イスラームの到来
イラン系の王朝
モンゴル人
アフガニスタン王国の建国に向かって
サドーザイ朝
英国との戦い
アブドゥッラフマーン・ハーン朝
アフガニスタンの変革
共産主義時代
ソ連軍撤退後の時代
エピローグ

著者等紹介

フォーヘルサング,ヴィレム[フォーヘルサング,ヴィレム][Vogelsang,Willem]
1956年生まれ。ライデン大学(オランダ)で古代インドとイランの諸語を学び、1990年にフローニンゲン大学で博士号を取得。現代はライデン国立民族博物館の学芸員

前田耕作[マエダコウサク]
アフガニスタン文化研究所・所長/和光大学名誉教授。1957年、名古屋大学文学部哲学科(美学・美術史専攻)卒業。和光大学表現学部教授を経て、2003年より現職。専門はアジア文化史、特に中央アジア

山内和也[ヤマウチカズヤ]
独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所国際文化財保存修復協力センター地域環境研究室・室長。1984年、早稲田大学第一文学部(東洋史専攻)卒業。88年、早稲田大学文学研究科修了。92年、テヘラン大学人文学部大学院修了。96年、シルクロード研究所研究員を経て、2003年より現職。専門はイラン、中央アジアの考古学。現在はアフガニスタンのバーミヤーン遺跡の調査研究、保存修復事業に従事
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